[III-OR25-06] 低酸素飼育右室圧負荷ラットの心筋ミトコンドリアは圧または低酸素単独負荷と比較しミトコンドリア動態を改善し線維化を軽減した
キーワード:右室不全, 低酸素血症, ミトコンドリア
【背景】近年先天性心疾患の治療成績は向上し、特にチアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)に対する成績改善の寄与が大きい。一方で術後の狭窄病変やチアノーゼ残存により心不全が遷延し綿密な管理を要することがあり、その主心室の多くは右室である。右室不全に関して近年知見が蓄積されているが、CCHDにおける右室リモデリングへの影響は未だ不明である。【目的】低酸素負荷右室不全動物モデルを作成し右室の組織学的評価を行う。【方法】離乳直後の3週齢SDラットを低酸素環境(13%)で1週間飼育し4週齢時に肺動脈絞扼術(PAB)を施行する。術後も低酸素飼育を継続し3週後に摘出臓器標本による心室重量と心筋線維化測定、電子顕微鏡を用いてミトコンドリア(mt)形態評価を行う。結果を大気飼育群と比較する。【結果】対象はPABを施行した低酸素群(PBH)n=8, 大気群(PBR)n=9, PABを施行していない低酸素対照群(CH)n=6, 大気対照群(CR)n=9。術後3週の右室負荷所見は同等(RV/LVIVS比PBH0.51±0.03, PBR0.58±0.02, p=0.15), 繊維化率は環境要因を補正するため同サンプルの左室線維化率と比較し算出しPBHは軽減傾向(右室対左室線維化比PBH1.3±0.1, PBR1.9±0.2, p=0.09), mt形態は圧または低酸素単独負荷で膨化(mt面積(μm2)PBH0.75±0.07, PBR0.85±0.16, CH1.09±0.04, CR0.79±0.07, p=0.07)したがPBHでは形態が維持された。【結論】mtは細胞内で酸化的リン酸化および解糖系を用いてATP産生を担う小器官であり、特に心筋細胞で豊富で心機能維持に必須の器官である。過剰な圧や虚血負荷により傷害をきたしマイトファジーを介して線維化が生じ心不全に至る。本結果は圧または低酸素単独負荷ではmt傷害を示したが、圧かつ低酸素負荷を与えた心筋はmt形態が維持され線維化も軽減した。圧かつ低酸素負荷は心室mt動態を改善すると示唆され、関与因子の同定はCCHDにおける心室機能維持機構の解明に繋がり治療介入への可能性が示唆された。