[III-OR26-01] フォンタン循環病態と腸内細菌叢変容
Keywords:フォンタン, 腸内細菌叢, 心不全
背景:フォンタン術後(F)遠隔期は心不全、肝疾患や糖尿病などの病態が関連するが、これら病態は腸内細菌叢変容(GD)と関連が深い。しかし、F病態とGDの関連は全く不明である。目的:F患者のGDの有無を検討し、GDと多様なF術後病態と予後との関係を検討する。方法と結果:対象は2019年8月から2022年8月までに当院に定期検査入院したF患者連続129例(24±8歳)と同時期の健常者44例(22±11歳)の計173例とした。抗生剤投与前の糞便を採取し腸内細菌由来DNAを精製し、メタゲノム解析では16SrRNA遺伝子をシークエンス解析し菌種構成を評価した。腸内細菌叢のα多様性の解析として菌種数を表すOUT数とFaith’s PD(FPD)を、β多様性として菌種叢の系統樹に基づく菌種構造の類似度をUniFrac解析から評価した。また、心血行動態指標に加え、心筋障害指標として心筋トロポニンT(TnT)を、腸内細菌の体内侵入(BT)指標として血中von Willebrand因子(VWF)を、肝線維化指標としてM2BPGiを測定した。健常者に比べF患者のα多様性(OTU数[221±62 vs. 267±104]及びFPD[22±5 vs. 25±8]は低く(両者p < 0.01)、β多様性もF患者で低かった(p < 0.01)。F患者では、OUT数、FPDは中心静脈圧、TnTと負相関し、動脈酸素飽和度、最高酸素摂取量と正相関を示した(全てp < 0.05)。また、OTU数、FPDはVWF及びMCBPGiと負相関を示した(両者p < 0.05)。GD解析後平均18か月の経過観察で129例中18例で心不全関連入院を要し、コックスハザード解析ではOTU数とFPDはいずれもこの心不全関連入院と関連した(両者p < 0.05)。結論:F患者は健常者に比べGDを呈する。このGDは運動耐容能低下や心不全予後と関連し、更にBTを介したGDが潜在的な心筋障害や肝線維化の進行に関与する可能性を示唆する。