[III-OR26-02] 畳み込みニューラルネットワークによる心電図を用いた小児心不全予後予測モデルの構築
Keywords:ニューラルネットワーク, 心電図, 心不全
【背景】近年の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた研究で成人心電図を入力とした心機能評価が行われている。小児では先天性心疾患や年齢等を考慮して成人とは別に検討が必要である。小児心電図を入力とした心不全予測モデル構築の試みを報告する。【方法】1999-2020年に東京大学医学部附属病院で記録された15歳以下の12誘導心電図のうち、診療録の病名から心不全リスクがあるとみなした集団を対象とした。2心拍の心電図電位からBNPの回帰予測を行うCNNモデルを構築した。出力値は心電図から予測される「心不全らしさ」とみなせるため、electrical heart failure index (EHFI)と呼称することとした。心電図記録から180日以内の主要心血管イベント(MACE)についてEHFIとBNPとの関連を調べ比較した。【結果】1,180患者由来の3,679心電図を用いた。EHFIとBNPの相関係数は0.515に留まったが、MACE発生に関するPrecision-Recall曲線下面積はBNPで0.117 (95% CI 0.104 – 0.137)だったのに対しEHFIでは0.261 (95% CI 0.185 – 0.437)と有意に大きく、EHFIとBNPの対数を共変数としたCox多変量解析では両者とも有意(log10 EHFI: p<0.005, HR=16.9 log10BNP: p=0.017, HR=3.12)であった。両者の多重共線性は弱くEHFIはBNPと独立した心不全情報を持つ可能性が示唆された。BNPの値が上昇すると100 pg/mL周囲でMACE発生率はピークを迎えたのち低下するのに対し、EHFIではMACE発生率はほぼ単調増加していた。【結論】CNNによりBNPと独立した心不全情報を小児心電図から抽出することが可能であった。EHFIは小児心不全の治療をガイドする新しい指標になる可能性がある。