[III-OR27-01] 冠動脈肺動脈瘻を合併した心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖の臨床的特徴の検討
Keywords:肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損症, 冠動脈肺動脈瘻, 先天性心疾患
【背景】心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖(PAVSD)は冠動脈肺動脈瘻(CPF)を稀に合併するが、過去の報告は症例報告に限られ、これまでに臨床像の系統的な検討はない。【目的・方法】Pubmedで検索し得た42文献69症例のCPFを合併したPAVSD(CPF/PAVSD)の臨床情報を収集・解析し、特徴を明らかにする。【結果】男女比は1:1で、22q11.2微細欠失症候群(22q11DS)合併は3 %と少なかった。CPF起始は左冠動脈が45例(65 %)、右冠動脈が12例(17 %)、両側冠動脈と単一冠動脈がそれぞれ5例、7例であった。左冠動脈から起始したCPFは86 %が両側肺に分布しており、他の冠動脈起始と比べて両側肺への分布が有意に多かった(p<0.05)。CPF以外の主要体肺側副動脈を有する症例は40例(62 %)、動脈管を有する症例は8例(12 %)であった。CPFの診断は乳児期が20例、成人期が5例であり、70 %で診断確定のために血管造影が行われていた。52 %で一期的修復術が実施され、43 %で姑息手術が行われ、5 %は成人期にCPFに対するカテーテル治療を受けていた。心内未修復の成人3例と大動脈弁閉鎖不全合併の小児1例が心筋虚血を合併していた。死亡例は7例(12 %)であった。【考察】解剖学的に主肺動脈に近接している左冠動脈が胎生期にCPFを形成しやすく、また22q11DSでは発生学的に中心肺動脈が低形成なため冠動脈との交通が形成されにくい可能性が考えられた。乳幼児におけるCPF診断には、血管造影が必要な場合が多かった。CPF/PAVSDの死亡率は、CPF非合併PAVSDとほぼ同等であり、積極的な修復術の妨げとなることは少ないと考えられる一方、長期間のチアノーゼやCPF以外の盗血現象を合併する場合、心筋虚血のリスクに注意を要すると考えられた。【結論】CPF/PAVSDはユニークな臨床的特徴を有する。手術戦略や予後についてはCPF非合併PAVSDと大きな差異は見られないが、心筋虚血の合併リスクに対する早期介入が必要な例がある。