[III-OR28-06] Fontan術後蛋白漏出性胃腸症における16S rRNAシークエンスを用いた腸内細菌叢解析
Keywords:gut microbiota, Protein-Losing Enteropathy, Fontan procedure
【背景】Fontan術後に発症する蛋白漏出性胃腸症(PLE)はしばしば治療抵抗性で予後不良であるが、その病態は十分に解明されていない。近年細菌の16S rRNAを標的とした次世代シークエンスによる網羅的解析から、腸内細菌叢の組成と機能が多くの疾患の病態と関連することが報告されている。本研究ではPLE患者の腸内細菌叢を解析し、病態に関連するか検討した。【方法】2020年4月から2022年12月までに、研究協力施設で診療されたFontan術後PLE患者とPLE未発症の患者を対象とした。補充療法なしで1年以上 Alb: 3.0g/dl以上を維持し、PLE関連入院がない患者をstable PLE、それ以外をactive PLEと定義した。便サンプルから細菌DNAを抽出した後、16S rRNA領域のPCR増幅を行い、次世代シークエンンサーMiseqを用いて配列データを得た。細菌叢に関する一連の解析はQIIME2パイプラインを用いた。【結果】PLE患者17例(active PLE群:8例、stable PLE群:9例)、対照群:20例を解析対象とした。年齢の中央値はPLE群、対照群共に14歳で差はなかった。細菌叢解析の結果、α多様性の指標であるShannon indexとChao1は、active PLE群で有意に低く(q=0.033、q<0.01)、細菌叢の多様性低下が示唆された。各群の細菌叢を主座標分析でプロットしunweghited Unifrac距離を算出すると、acitive PLE-対照群およびactive PLE-stable PLE間に有意差を認め(q<0.01)、active PLE群は他2群と異なる細菌叢を持つことが示唆された。Analysis of composition of microbiomesにより群間の菌種の差異を解析すると、active PLE群ではProteobacteria門の比率が高く、Actinobacteria門の比率が低かった。【考察・結論】活動性PLE患者はPLE未発症または寛解状態のPLE患者に比べ異なる腸内細菌叢を持ち、多様性が低下していた。腸内細菌叢解析は、今後Fontan術後PLEの病態解明、治療抵抗性を予測する新規バイオマーカーの探索などに寄与する可能性がある 。