[III-OR28-05] フォンタン手術後、接合部調律を認める症例の臨床像と留意点
Keywords:接合部調律, フォンタン手術後, 洞機能低下
【背景】フォンタン手術後、洞機能低下による徐脈や接合部調律(JR)は非生理的心拍数と考えられ、フォンタン循環において不利益であることに疑問の余地はない。一方、フォンタン手術後の生理的で至適な心拍数は明確ではなく、より生理的で至適と思われる心拍数を得るためにペースメーカー治療(PM)を積極的に導入することは、開心手術を必要とすることもあり、その適応判断が非常に難しい。【目的】TCPC後、接合部調律(JR)を認める症例の現状を評価し、今後の治療指針を検討する。【対象・方法】TCPC後JRを認める10症例。方法は、JRの出現時期(OS)、出現後のフォローアップ期間(FU)、最終心カテ時のCVP,SVEDP、BNP,γGTP値、直近のJR rate、ホルター心電図や運動負荷心電図での心拍数増加時の洞調律(SR)の有無などを検討した。【結果】JRのOS:中間値0.3年(直後~4.1年)、FU:6.0±4.4年、CVP:13.6±4.0mmHg、SVEDP:6.4±2.2mmHg、BNP:52.3±64.7pg/ml、γGTP:49.0±26.2IU/L、JR:65.4±13.6bpm。1例フォンタン手術終了時からJRを認めPM施行。残りの9例中8例でSR有だった。【考察】JRは心房圧の上昇を来たしCVPの上昇に繋がると考えられる。一方で、心房圧の上昇と心室拡張末期圧の連動はなく、心室拡張能は保たれていた。JRが61bpm未満の4例は全例CVP15mmHg以上であった。うち2例はJRが40台で、14歳例はCVP19,EDP9、10歳例はCVP15,EDP7と、心拍数の少なさにFUの長さが相乗的に心室拡張能へ影響することが懸念される。PMを導入していない背景には、心拍数増加時のSRの確認があった。【結語】フォンタン術後の至適心拍数は明確でないが、CVPやEDPの上昇は指標になる。PM導入の判断材料に少なくともSR有無の確認が望ましい。