[III-OR29-05] 人工心肺回路緊急トラブルにおける人工肺交換用チューブの有用性
Keywords:回路トラブル, 人工肺交換, JaSECT標準回路
【背景】体外循環(CPB)中の人工肺圧の上昇による緊急肺交換や、想定外の送血部位追加・変更には循環再開までの時間短縮が重要である。当施設では以前、小児開心術施行中の肺交換はCPBを離脱して行っていたが、2018年より人工肺前後圧測定用側枝を肺交換用チューブとする回路構成に変更した。これはJaSECTから通知された成人用人工心肺標準化回路(標準回路)に類似した回路構成となっている。今回、肺交換用チューブを使用することで安全に肺交換・送血回路の追加を施行し得た2症例を経験したので報告する。【症例】1.左肺動脈欠損による肺動脈再建術を心拍動下CPBで施行した1歳、8.2kg、男児。CPB開始5分後より肺前後のΔP値が200mmHgを越えたため、肺交換用チューブを使用して肺交換を行った。2.極型ファロー四徴症に対して肺動脈弁置換術を拍動下CPBで施行した32歳、41.0kg、男性。4回目の開胸に際し、F-F BypassでCPBを開始したが、剥離中に大腿動脈の攣縮による送血圧上昇をきたし、CPB維持が困難となった。肺後圧測定用側枝を使用して上行大動脈送血回路を追加し、2本送血のCPBを確立した。【考察】2症例とも拍動下CPBであり、離脱も可能であったが、侵襲を考慮しCPBを離脱せずに対応可能であった。これらの対応方法は心停止下においても同様と考えられる。また、小児では血液希釈率の低減や回路接触面積の増加による生体反応などを考慮し、プライミングボリュームを削減する傾向ではあるが、2症例の対応を経験し小児回路においても標準回路構成が有用であると考えられた。【まとめ】肺交換用チューブの使用により、CPBを停止することなく、安全な肺交換および送血回路の追加が可能であった。