[III-P09-4-06] 積極的治療を望まなかった重症僧帽弁逆流を伴った重症大動脈弁狭窄の一例
キーワード:胎児診断, 緩和ケア, 重症大動脈弁狭窄
【背景】胎児診断が進歩し、胎児期に家族の疾患の理解を進め、生後の治療計画を立てることができる一方、家族が疾患を受容できない場合や治療を行っても未だ予後不良な疾患もみられる。【症例】母体1経妊0経産、在胎27週に大動脈弁狭窄疑いで当院に紹介となった。僧帽弁逆流は経時的に増悪し、生後の治療後も予後不良な疾患群と診断した。診断時に両親へは診断、生後の治療方針、その成績も含め説明したが、生後の治療も希望せず、安定すれば自宅への退院を希望した。外来受診の度に生後の治療や予測される予後の説明を行い、胎児期に計7回、両親の意思確認を行った。また、緩和専門医からも両親との3回の面談を行ってもらい、治療を行わない場合の児への対応についても説明した。産科医、新生児科医、緩和専門医、周産期病棟スタッフ等で産前からカンファレンスを計3回行った。しかし両親の意向は変わらず、妊娠38週のカンファレンスで積極的治療を行わない方針とした。児は在胎39週1日、3313gで出生した。胎児診断通りであり、再度両親に意思の確認を行ったが、治療は望まなかった。多呼吸、陥没呼吸が出現したため、利尿剤および塩酸モルヒネの内服を開始した。退院前にソーシャルワーカー、薬剤師等より在宅での内服管理、保健師、訪問看護師などの介入の内容を説明した。症状の緩和が得られた日齢6に自宅退院とした。両親が急変時の蘇生は望まず、症状悪化時は自家用車で当院に受診する方針とした。当科、緩和医療科、新生児科で週1回の外来経過観察を行った。日齢24に呼吸状態が悪化したため入院となり、日齢25に院内で死亡した。【考察】小児循環器医は胎児期から正確な診断と予後予測を行い、正確な情報を両親に伝えることが必要である。そのうえで、多職種と連携して、緩和医療も含めた、両親の希望をできる限り尊重することも必要であると感じた。