[III-SY09-04] 小児心臓移植医療の現状と展望
Keywords:心臓移植, 予後, 移植後リンパ増殖性疾患
2010年の臓器移植法改正によってわが国でも小児脳死ドナーが認められるようになり、国内での小児心臓移植の道が開かれた。その後徐々に小児心臓移植実施例は増加し、2019年には10歳未満7例、10歳から17歳10例、合計17例が実施された。その後、新型コロナウイルス感染症の影響もあってか成人・小児ともに実施数は減少し、2022年では10歳未満7例、10歳から17歳1例、合計8例にとどまっている。小児における移植待機期間は成人ほど長期ではないものの、2020年で平均442日となっており、特にそれ以降の2年でさらに長くなってきている。一方でわが国における小児心臓移植後の生存率は、国際心肺移植学会レジストリデータに比して良好とされている。私たちはこれまで2010年の法改正以前は渡航心臓移植後患者の慢性期管理を、そして法改正以後は主に国内移植の急性期管理から長期管理までを行っており、2000年から2022年まで74例(海外移植35例、国内移植39例)の20歳未満心臓移植症例をフォローアップしてきた。原疾患は拡張型心筋症42例、拘束型心筋症22例、先天性心疾患4例、虚血性心筋症3例、心筋炎後心筋症2例、その他1例であった。補助人工心臓装着例は、EXCOR 17例、植込み型13例、Nipro 7例であった。移植後死亡例は9例、うち4例は移植後リンパ増殖性疾患によるものであった。移植後冠動脈病変による死亡も2例あった。総数74例の移植後5年、10年、15年生存率はそれぞれ92%、92%、85%であり、渡航移植(N=35)と国内移植(N=39)に有意差はなく(log-rank test: P=0.564)、渡航移植においても国際データより良好な成績であった。しかし、移植後リンパ増殖性疾患は12人で発症しており、また、血液浄化療法は4人で必要としていた。そのうち3例では腎臓移植も実施されていた。今後、移植心のさらに長期にわたる良好な管理を目指して、移植後心筋組織を用いたマルチオミクス解析による拒絶病態の解析を試みている。