The 59th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム12(III-SY12)
オミックス解析がもたらす小児心血管疾患研究の新たな展開

Sat. Jul 8, 2023 9:20 AM - 10:50 AM 第6会場 (G301)

座長:横山 詩子(東京医科大学細胞生理学分野), 座長:古道 一樹(慶應義塾大学医学部小児科)

[III-SY12-02] Fontan術後蛋白漏出性胃腸症における16S rRNAシークエンスを用いた腸内細菌叢解析

郷 清貴1, 山本 英範1, 森本 美仁1, 深澤 佳絵1, 大橋 直樹1,3, 安田 和志4, 石川 友一5, 倉石 建治6, 鈴木 一孝7, 伊藤 嘉規8, 加藤 太一1 (1.名古屋大学医学部 医学系研究科 小児科学, 2.カロリンスカ研究所 腫瘍細胞生物学 微生物学部門, 3.JCHO中京病院 中京こどもハートセンター 小児循環器科, 4.あいち小児保健医療総合センター 循環器科, 5.福岡市立こども病院 循環器科, 6.大垣市民病院 小児循環器新生児科, 7.名古屋市立大学大学院 医学系研究科 新生児・小児医学分野, 8.日本大学医学部 小児科学系 小児科学分野)

Keywords:腸内細菌叢, 蛋白漏出性胃腸症, Fontan手術

【背景】Fontan術後に発症する蛋白漏出性胃腸症(PLE)はしばしば治療抵抗性で予後不良である。近年細菌の16S rRNAを標的とした次世代シークエンスによる網羅的解析から、腸内細菌叢組成の変化が多くの疾患の発症や重症化と関連することが報告された。本研究ではPLE患者の腸内細菌叢を解析し、PLEの重症化や治療抵抗性に関連するか検討した。【方法】2020年4月から2022年12月に、研究協力施設で診療されたFontan術後PLE患者とPLE未発症の患者を対象とした。補充療法なしで1年以上 Alb: 3.0g/dl以上を維持し、PLE関連入院がない患者をstable PLE、それ以外をactive PLEと定義し、PLE未発症の患者を対照群とした。便サンプルから細菌DNAを抽出した後16S rRNA領域のPCR増幅を行い、次世代シークエンンサーMiseqを用い配列データを得た。細菌叢の解析はQIIME2パイプラインを用いた。【結果】PLE患者16例(active PLE群:7例、stable PLE群:9例)、対照群:20例を解析対象とした。年齢の中央値はPLE群、対照群共に14歳で差はなかった。細菌叢解析の結果、α多様性の指標であるShannon indexとChao1は、active PLE群で有意に低く(q=0.026、q<0.01)、細菌叢の多様性低下が示唆された。各群の細菌叢を主座標分析でプロットしunweghited Unifrac距離を算出すると、acitive PLEと対照群間およびactive PLEとstable PLE間に有意差を認め(q<0.01)、active PLE群は他2群と異なる細菌叢を持つことが示唆された。ANCOM(Analysis of composition of microbiomes)により群間の菌種の差異を解析すると、active PLE群ではProteobacteria門の比率が高く、Actinobacteria門の比率が低かった。【考察・結論】活動性PLE患者はPLE未発症または寛解期のPLE患者とは異なる腸内細菌叢を持ち、多様性が低下していた。腸内細菌叢解析は、Fontan術後PLEの病態の解明、治療抵抗性を予測する新規バイオマーカーの探索などに寄与する可能性がある。