[III-SY13-01] 治療を希望しない症例への法的関わりについて
キーワード:治療を希望しない症例, 親権停止, 児童相談所
医師としては治療を行うべきと考える症例でも、子どもの親が治療を希望しない場合がある。治療を行わないことにより子どもの生命・身体に重大な影響があり、その安全を確保するために医療行為が必要なケースについては、行政(児童相談所)や司法(家庭裁判所)が介入し、一時保護した上で児童相談所長の同意を得る、家庭裁判所に親権停止を申し立て、保全処分により選任された職務代行者や選任された未成年後見人の同意を得る、あるいは生命・身体の安全確保のため緊急の必要があるときは児童相談所長の同意を得るなどして治療を行うことができる。医療機関としては、児童相談所に通告し、児童相談所と連携して対応することになる。他方で、治療を行い救命しても重い障害が残ることが想定されるケース、治療が奏功せず死期を早めかねないケースなどでは、治療を行うことが「子どもの最善の利益」に適うのかどうか医師においても判断に迷い、治療を行うのか(差し控え、あるいは中止するのか)否か、行政(児童相談所)等の介入を求めるのか否か、難しい判断を迫られる場面があると思われる。このような判断は、主治医だけで行うのではなく、医療機関が組織として行う必要がある。親が「治療を希望しない症例」の中には様々なケースがあると考えられるため、医療機関が、子どもに対する治療(治療の差し控えや中止を含む)方針をどのようなプロセス及びメンバーで、またどのような点を考慮して判断するのかを予め整理しておくことが有用である。関係するガイドライン、厚生労働省の通知等を踏まえて、治療(治療の差し控えや中止を含む)方針を決めるにあたっての手順や留意点について解説する。