The 59th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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多領域シンポジウム

多領域シンポジウム1(III-TRS1)
先天性心疾患をもつ子どもの身体活動を広げるために、多職種でできる支援を考える

Sat. Jul 8, 2023 9:20 AM - 10:50 AM 第4会場 (G303)

座長:金 基成(国立成育医療研究センター循環器科), 座長:大北 真弓(みえキッズ&ファミリーホームケアクリニック)

[III-TRS1-02] 理学療法士からみた先天性心疾患患児の身体活動機会を広げる支援の目的と方法

藤田 吾郎 (東京慈恵会医科大学葛飾医療センター リハビリテーション科)

Keywords:身体活動, 健康関連QOL, 行動変容

循環器疾患と理学療法士(PT)の接点は多い。虚血性心疾患や心不全患者への運動療法は、生命予後の改善や再入院率の低下、運動耐容能の改善を目的として行われ、標準治療のひとつに位置づけられている。一方、先天性心疾患(CHD)患児においては、周術期の呼吸理学療法や、神経学的な合併症を伴う児への運動発達支援で関わることが少なくない。翻って、身体活動を広げることを目的として、PTがCHD患児に関わる場面は概して多くない。CHD患児に対する運動効果のエビデンスは蓄積され、本邦や欧米のガイドラインでも推奨されつつある。それにも関わらず、臨床的に、あるいは循環器理学療法や心臓リハビリテーション領域で学術的にトピックになる機会も少ない。ましてや学校保健との関わりは希薄である。その理由としては、経年的には携わりにくい保険診療上の制限に加え、就学期には直接監視下での頻回な介入が難しいことなどの社会的要因がある。さらに、運動による臨床的アウトカムが、医療者、患児・家族、学校関係者にとって、分かりやすい目に見える治療効果とは限らないことも理由のひとつだと考えられる。本人はもちろん、周囲の関係者にとっても、運動による長期予後改善の可能性が、身体を動かすための内発的な動機づけを高める動因になっているかどうかは議論の余地がある。この視点は、身体活動の習慣化や、提供された運動プログラムを遵守する難しさを考える点でも無視できない。投薬などの治療に比べ、意思決定が多分に必要な運動介入による臨床試験の低い外的妥当性は課題となっている。すなわち、根拠に基づく運動処方に従った至適な運動を、「実際に続けられるのか」という難しさがある。本シンポジウムでは、こうした「身体活動を支援する目的をどう位置づけるべきか」ということに加え、「運動を続けるための行動変容を促す方法」について、自験例を交えながら紹介し、多職種で議論する機会としたい。