第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム2(I-CSY2)
子どもたちのための社会保障制度を知ろう!

2024年7月11日(木) 08:00 〜 09:30 第4会場 (4F 411+412)

座長:檜垣 高史(愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座 / 移行期・成人先天性心疾患センター)
座長:廣野 恵一(富山大学医学部小児科)

[I-CSY2-7] 国内の各種調査結果から見えてきたこと

落合 亮太1, 大澤 麻美2, 杉木 秀行2, 吉田 奈央子2, 中村 典子2, 春本 加代子2, 下堂前 亨2, 宗川 一慶3, 長町 千里4, 村上 富美恵3, 岩塚 明美3, 権守 礼美5, 池亀 俊美3, 矢崎 諭6,7, 磯部 光章8 (1.筑波大学 医学医療系, 2.全国心臓病の子どもを守る会, 3.榊原記念病院 看護部, 4.榊原記念クリニック 看護部, 5.シャイン・オン・キッズ, 6.榊原記念病院 小児循環器科, 7.榊原記念病院 成人先天性心疾患センター, 8.榊原記念病院)

キーワード:社会保障制度, 社会的決定要因, 就労支援

近年、Social Determinants Of Health(SDOH、健康の社会的決定要因)が注目されている。SDOHでは、人々の健康や病気は、経済、社会、政治、環境など様々な要因から影響を受けており、問題改善には社会的支援が必要とされる。循環器領域では、医療機関へのアクセス、経済状況、教育レベル等が疾患発症に影響することが知られている。我々の知る限り、社会的決定要因が先天性心疾患患者の予後に直接影響するというエビデンスはないが、社会的決定要因が成人先天性心疾患患者のHealth-Related Quality of Life (健康関連QOL)に影響するという報告は複数ある。直近では、Tatebe, S. et al.(2024)が国内4施設1025人を対象とした調査から、成人先天性心疾患患者の健康関連QOLはNYHA分類、脳梗塞既往等の医学的要因に加え、未就労、教育レベルといった社会的要因に影響されると報告している。
国内の成人先天性心疾患患者の社会生活を最も詳細に検討した調査として、全国心臓病の子どもを守る会が約5年毎に実施する生活実態アンケート調査がある。過去の調査からは、年収の低さや障害年金受給が患者の心理的苦痛と関連すること等が報告されている。最新の調査は2023年度に実施されており、就労状況や各種社会保障制度の利用状況等が調査されている。本発表ではその一部を速報値として紹介する。
近年、小児慢性特定疾患児童等自立支援事業の開始、指定難病対象疾患の拡充、移行期医療支援センターの設置等、先天性心疾患患者とその家族を支援する社会保障制度は充実しつつある。榊原記念病院看護部を中心としたグループは、成人先天性心疾患患者におけるこれら新しい制度の認知度等を評価した。本発表ではこの調査結果も踏まえ、今後の社会保障制度の課題について論じたい。