第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

JSPCCS-JHRS Joint Session

JSPCCS-JHRS Joint Session(I-JHRSJS)
先天性心疾患の心室性不整脈

2024年7月11日(木) 09:40 〜 11:10 第2会場 (5F 501)

座長:芳本 潤(静岡県立こども病院 不整脈内科)
座長:宮﨑 文(聖隷浜松病院 小児循環器科・成人先天性心疾患科)

[I-JHRSJS-1] 先天性心疾患に伴う心室頻拍に対するアブレーション

鈴木 嗣敏 (大阪市立総合医療センター 小児不整脈科)

キーワード:成人先天性心疾患, 心室頻拍, アブレーション治療

成人先天性心疾患(ACHD)に伴う心室頻拍(VT)は、単形性心室頻拍で血圧が保たれる場合は動悸を主訴に診断されることもあるが、心拍数が早く血圧が維持できない心室頻拍や、心室細動へ移行した場合は、致死的になることもある。
ACHDにおけるVTの不整脈基質は、遅伝導性の解剖学的峡部(Slow conducting anatomical isthmuses : SCAI)でのことが多い。SCAIは、手術侵襲による組織の瘢痕化、心室切開部分、弁輪によって形成され、マクロリエントリー回路を形成し、VTの発生に関与する。
カテーテルアブレーション治療の治療精度は、三次元電気解剖学的マッピング(EAM)システムの進化により向上している。ACHDに対するアブレーション治療は、血行動態が安定していてmapping可能な心室頻拍、もしくは洞調律中にSCAIを確認し、同部位を両方向性に伝導遮断し、不整脈が誘発されなくなることをend pointとし施行されている。
TOF術後のVT症例について、アブレーション後に植込み型除細動器(ICD)が必要かどうかが議論されてきた。ハイリスク症例にはアブレーション後もICD植込みを行った方がよいという議論もあるが、近年ではアブレーション治療の成績向上にともない、ICDの必要性を減らすことも期待されており、議論は続いている。
近年、経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)が日本でも行われるようになっており、術前に電気生理検査やアブレーション治療が必要かどうかも議論されている。
成人先天性心疾患患者における心室頻拍に対するアブレーション治療は、VTのリスクを低減し、患者の予後を改善するための重要な手段である。電気生理学的評価と適切な外科手術、内科治療、カテーテル治療の組み合わせにより、治療の成功率が向上し、患者の生活の質を大幅に向上させることができる。今後も、治療法の進化と新しい技術の導入が期待される。