第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

染色体異常・遺伝子異常

一般口演1(I-OR01)
染色体異常・遺伝子異常

2024年7月11日(木) 08:00 〜 09:00 第6会場 (4F 401-403)

座長:柴田 映道(慶應義塾大学医学部小児科学/日本赤十字社栃木県支部足利赤十字病院小児科)
座長:上砂 光裕(日本医科大学/日本医科大学多摩永山病院小児科)

[I-OR01-06] 小児期のMarfan症候群の診断と治療介入についての検討

大日方 春香, 元木 倫子, 内海 雅史 (信州大学 医学部 小児医学教室)

キーワード:マルファン症候群, β遮断薬, ARB

【背景】Marfan症候群(MFS)はFBN1遺伝子などの遺伝子変異により発症する全身性結合組織疾患であり、大動脈弁輪拡張に伴う解離の有無が生命予後を左右する。当科では遺伝子医療研究センターとの連携で早期診断が可能で、心血管合併症の進行予防としてβ遮断薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の予防内服と運動制限を行っている。【目的】小児期のMFS診断例の治療転帰を検討すること。【対象と方法】対象は2009年~2023年に当科で小児期にMFSと診断された35例(男子15例)。診断契機・治療経過・心血管イベントについて診療録から後方視的検討を行った。【結果】診断時年齢は8.1±5.0歳。診断契機は家族歴が21例、側弯症などの身体所見が14例。遺伝子検査は全例施行され、32例でFBN1遺伝子変異を認めた。当科での経過観察年数は5.1±3.6年であり、14例が成人診療科へ移行した。診断時のValsalva径のZ-Scoreは2.7±1.7で、23例で2.0以上であった。β遮断薬投与は32例で10.0±4.7歳(診断時点から0.2±2.2年)、ARB投与は29例で10.5±4.4歳(診断時点から0.9±2.8年)で開始され、大きな有害事象は認めなかった。運動制限は就学時(診断が就学以降の場合は診断時)から行っていた。新生児MFSであった重症の1例を除くと全体にValsalva Z-Scoreは開始前より改善した。観察期間中に心血管イベントを発症した症例はなく、4例で待機的外科治療となった。新生児MFSの1例は12歳でDavid手術・僧帽弁形成術となったが、それ以外の症例は15歳以上での介入であった。【考察】MFSでは大動脈解離の予防目的にβ遮断薬・ARBが有効と報告されており、我々の症例でも同様の傾向が見られた。本症のValsalva径は8歳頃から拡大速度が増すとの報告もあり、小児期早期の薬剤導入が心血管イベント発生の予防に有効な可能性がある。【結語】当科でのMFS診断例ではβ遮断薬・ARBが安全に導入され、Valsalva径の拡大の進行が抑制されている傾向にあった。