[I-OR03-02] 左心低形成症候群における重症左室冠動脈瘻合併は胎児期の左室形態と関連している
キーワード:左心低形成症候群, 左室冠動脈瘻, 胎児エコー
【背景】左心低形成症候群(HLHS)の僧帽弁狭窄大動脈弁閉鎖(MSAA)症例は予後不良である。左室冠動脈瘻(SC)合併の有無は重要なリスク因子であり、重症SC・心房中隔欠損(ASD)狭小例はASD拡大時重大な心イベントを起こし得る。【目的】胎児期のエコー所見でSC合併やその重症度を予測する。【方法】対象は2013年1月~2023年12月に当院でHLHS(MSAA)と診断した胎児10例。胎児期の心形態と出生後のSC合併やASD拡大時重大心イベント発生との関連を検討。心形態は左室・僧帽弁・上行大動脈等の径、僧帽弁逆流や卵円孔狭窄の程度を評価。左室が正円形・楕円形のいずれにより近いかを評価するため、左室縦横径比から1を除した値の絶対値をLeft ventricle morphological index(LVM Index)と定め、値が小さい程正円形に近い左室であるとした。【結果】胎児エコー施行時期中央値は妊娠31週0日。8例がSCを合併。SC合併例は非合併例よりLVM Indexが有意に小さく(0.24 vs 1.34, p=0.04)、左室は正円形に近かった。SC合併例中7例が新生児期にASD拡大を要し、うち4例に重篤な心イベント(心筋障害1例、一過性房室ブロック2例、上室性頻拍1例)が発生。心イベント発生例(4例)、SC非合併例を含む心イベント非発生例(6例)の比較でも、心イベント発生群のLVM indexは有意に小さかった(0.10 vs 0.83, p=0.01)。僧帽弁輪径や僧帽弁逆流・卵円孔狭窄の程度はSC合併の有無や心イベント発生と関連なし。SC合併、心イベント発生の有無を予測するLVM indexのカットオフ値をそれぞれ1.051、0.219とするといずれのAUCも1と良好な感度・特異度を示した。【考察】胎生期のSC形成には閉塞された高圧の心室腔が関連している。正円形に近似する左室の内腔は高圧であることが示唆され、SC発生・重症度と関連し得る。【結論】HLHS(MSAA)の胎児エコーで左室形態をLVM indexで評価することで、SC合併やASD拡大時の心イベント発生の有無を予測できる可能性がある。