[I-OR11-02] 当院における新生児重症Ebstein病に対する修正Starnes手術の成績
キーワード:Ebstein病, Starnes手術, 新生児
【背景】Ebstein病は極めて多様な解剖形態を持つ疾患であり、その多様性ゆえに治療法を標準化することが困難な疾患である。中でも新生児重症Ebstein病は重篤な心不全、チアノーゼを呈し致死的となるため様々な手術がおこなわれてきた。一心室修復を目指す新生児重症Ebstein病に対するStarnes法は予後を改善したが、それでも死亡率は20-35%程度と高く様々な改良が試みられている。【目的】新生児重症Ebstein病に対する修正Starnes法の有用性を検討する。【方法】2004年から2023年に当院で一心室修復術をおこなった新生児重症Ebstein病の7例を後方視的に検討した。【結果】全例胎児診断症例で術前人工呼吸器管理、カテコラミンの使用を要した。肺動脈閉鎖は4例に合併していた。5例はTCPCまで到達し遠隔期死亡はみられなかった(平均生存期間11.7年)。術後死亡は2例で、いずれもCarpentier 分類 C型、Celermajer Index はgrade IIIであった。胎児仮死で出生し重症心不全から日齢2日に手術をおこなった症例では術後呼吸・循環不全が進行し第2秒病日に死亡した。もう一例は胎児期よりcircular shuntのため母体にNSAIDs投与を行なった症例で、胎児腎不全・羊水過小のため在胎週数35週で帝王切開を行い緊急手術を施行したが術後腎不全が改善せず失った。手術は初期の2例は三尖弁閉鎖の際に5mmの孔を作成しており、後期の5例(死亡2例を含む)は0.4mmGore-Tex sheetに4mm孔を作成し1弁付きパッチを縫合した。【考察】当施設におけるStarnes手術後の早期死亡率は7例中2例(29%)と過去の報告と比して低値であった。術後早期を乗り切った5例に関しては全例TCPCまで到達し遠隔期死亡はみられなかった。1弁付きパッチによる修正Starnes手術は術直後より右室容量を減少させることで左室圧排を回避でき、術後不整脈も減少させている可能性があると考えられた。【結論】新生児重症Ebstein病に対する修正Starnes手術は有効であった。