[I-OR12-04] 機械学習による全心周期ストレインデータ解析を用いた小児がん経験者の早期心機能低下患者群の分類
キーワード:心毒性, ストレイン, 機械学習
【背景】小児がん経験者において、アントラサイクリン系薬剤の心毒性は生命予後に重大な影響を与える。従来のピーク値のみを用いる心エコー評価方法では心機能の経時的な変化の予測は困難であるため、全心周期のデータを用いてより詳細に評価することとした。【目的】アントラサイクリン系薬剤を含む化学療法を受けた小児がん経験者の経時的な心機能評価において、機械学習を用いた全心周期ストレインデータ解析により早期から心機能低下をきたす患者群を分類する。【方法】対象は、当院でアントラサイクリン系薬剤を用いた化学療法を行い、治療終了後1年以上経過した時点で心臓超音波検査を行った4歳から36歳(平均15.5歳)の小児がん経験者121例と年齢の近似した正常対象115例。心臓超音波検査では一般計測および層別長軸方向ストレイン(LS)、左室心基部、乳頭筋部及び心尖部の層別円周方向ストレイン(BCS, PCA, ACS)を計測した。全心周期ストレインデータを用いて教師なし機械学習を行い、小児がん経験者を正常類似群と相違群に分類し、比較検討を行った。また1年以上間隔をあけて複数回の計測を行った72症例について、経時的な変化を評価した。【結果】LS及びBCSの層別ストレインを特徴量として機械学習を行うことで、最も明確に正常類似群と相違群の2群に分類され、ストレインカーブにおけるピーク値の低値と遅いタイミング及びBCSの遅い立ち上がりが反映された。初回評価において相違群は正常類似群に比べ、有意に心拍数が高値、E/A、e’が低値であったが、EF、LS及びBCSに有意差は認めなかった。経時的評価においては、相違群のみLS及びEFが有意に低下した。【結論】機械学習を用いた全心周期ストレインデータ解析では、小児がん経験者の心機能評価において、微細な拡張機能低下を捉え、経時的に心機能低下をきたす患者群を分類することが出来る。