[I-P01-3-04] 川崎病心血管後遺症フォローアップ中に発症した心内血栓を非造影心臓MRIで非侵襲的にフォローアップした1例
キーワード:川崎病, 心臓MRI, MPRAGE
【背景】川崎病による心筋梗塞後の慢性期における心内血栓は、脳梗塞などの塞栓症を引き起こす潜在的リスクを持つ。従来、心内血栓の診断には経胸壁心臓超音波や心臓造影CT/MRIが主に用いられてきたが、これらの方法には特定の心部位の評価が難しい、造影剤による副作用や撮影時の被曝といった限界が存在する。非造影心臓MRIの利用がこれらの問題を克服しうる可能性があるが、その臨床的有用性についてはまだ十分に検討されていない。本発表では、非造影心臓MRIを用いて心内血栓を非侵襲的に診断及び経過観察した症例を報告し、その臨床的意義を探る。【症例】40歳代男性、生後半年に川崎病を発症し、心筋梗塞および脳梗塞の既往がある。左室EFは32%で、非持続性心室頻拍の既往があった。アスピリン、カルベジロール、ソタコールで経過観察されていた。川崎病の冠動脈後遺症の経過観察目的に心臓MRIが施行され、脂肪抑制併用3D-T1強調画像(MPRAGE)で左室心尖部に10mmの高信号結節が確認された。心内血栓の診断のもと緊急入院した。治療方針として、ワーファリンのローディングを開始し、PT-INRの目標範囲を1.6-2.6に設定、さらに、ヘパリン持続点滴療法を導入し、APTTを1.5-2.0倍を目安に管理した。治療開始7日後のフォローアップMRIでは、血栓が4×6mmに縮小し、ワーファリン内服のみでの管理に切り替え、第16病日に退院し外来でのフォローアップとなった。【考察】MPRAGEを用いた非造影心臓MRIによる心内血栓の評価は、造影剤や被曝によるリスクを伴わずに精度の高い診断を可能にした。本症例からは、低心機能症例においては、加齢とともに心室内血栓の出現がありうるため、抗凝固療法の併用を考慮し、定期的に心内血栓の検索をする必要がある。その方法の1つとしてMPRAGEを用いた非造影心臓MRIの潜在的な役割が示唆される。