[I-P01-6-08] プロスタグランジンE1製剤やホスホジエステラーゼ3阻害薬を用いた極低出生体重児に合併した大動脈縮窄症に対する治療戦略
キーワード:極低出生体重児, 大動脈縮窄症, lipoPGE1製剤
背景:動脈管(DA)の閉鎖と共に顕在化するCoAをしばしば経験し、大動脈峡部の動脈管組織の関与が示唆される。リポプロスタグランジンE1製剤(lipoPGE1)やホスホジエステラーゼ3(PDE3)阻害薬は動脈管組織を拡張させる可能性がある。lipoPGE1製剤やPDE3阻害薬を用い、大動脈縮窄の進行を遅らせることによって手術時期を遅らせ得た極低出生体重児の大動脈縮窄症(CoA)3症例について報告する。症例:いずれも体格差のある一絨毛膜二羊膜双胎(MD)双胎の小児であった。症例1は在胎29週に744gで、症例2は在胎30週に867gで、症例3は在胎30週に1008gでそれぞれ出生した。いずれの症例もDA閉鎖と共に大動脈峡部の狭小化が進行し、大動脈峡部の流速がそれぞれ2.9, 2.1, 3.4m/sと加速を認め、血圧の上下肢差をいずれの症例も約30mmHg認めた。症例1と症例2はlipoPGE1投与により血圧の上下肢差は減少したが、動脈管開存症(PDA)による肺血流量増加に起因する心不全が進行し、それぞれ日齢9,12にDA結紮術を施行した。その後もlipoPGE1を継続したが、症例1では手術可能な体重まで内科的管理の継続は困難と判断し、日齢37に体重907gでステント留置術を施行し、その後は体重増加が得られた。両児とも生後4か月(体重2954g, 2604g)で大動脈再建術を施行した。症例3では顕在化したCoAに対してPDE3阻害薬を開始したところ、大動脈峡部が拡大したが、PDAに伴う心不全が進行したため、PDE3阻害薬は中止した。その後、DA閉鎖に伴いCoAが重症化したためPDE3阻害薬を再開し、lipoPGE1を追加したところ、DA再開存なく大動脈峡部のみが拡大した。現在生後1か月、体重1067gで経腸栄養を増量しながら経過観察中である。考察:lipoPGE1製剤とPDE3阻害薬の併用療法はCoAの進行を遅らせステント留置術や外科手術のタイミングを遅らせることができ、極低出生体重児に合併したCoAの治療に有効な可能性がある。