[I-P02-1-09] 生体弁置換術後短期間で重症大動脈弁狭窄に至ったMarfan症候群の1例
キーワード:Marfan症候群, 大動脈弁狭窄症, 生体弁
【背景】Marfan症候群の合併症である大動脈弁輪部拡張 (AAE)と大動脈弁閉鎖不全(AR)の手術時期、方法は、年齢や性別、ライフスタイルなどを考慮に入れ決定するが、若年での手術後の経過には注意が必要である【症例】15歳女児。出生時に特徴的な顔貌、四肢異常、経胸壁心エコー(TTE)で大動脈弁輪拡大を認め、Marfan症候群が疑われた。遺伝学的検査でFBN1遺伝子エクソン27のバリアントを認め確定診断。アンギオテンシン2受容体拮抗薬、β遮断薬内服を開始し、5歳時に当院紹介、TTE上Valsalva洞径28-32mm、AR軽度で経過していた。8歳時にスイスへ転居し、11歳時にDavid法による大動脈基部置換術が行われたが、術後ARが進行し、径19mmの生体弁による大動脈弁置換術が行われた。14歳時に帰国し、無症状で経過したが、胸郭変形のため、TTEで大動脈弁の描出が困難であった。15歳時に呼吸苦で当院に入院、TTEで中等度のARあり、経食道心エコー(TEE)、心臓カテーテル検査で重度の大動脈弁狭窄(AS)、弁周囲から生じるAR、心収縮低下を認め生体弁機能不全によるASおよびAR、急性心不全と診断、内科的治療の反応乏しく、同日に大動脈手術の可能な他院へ転院となった。転院翌日にECMO導入のうえ、径21mm生体弁による大動脈弁置換術およびBentall手術が行われた。術中所見では、生体弁と人工血管の縫合部が1/3周破綻し、生体弁は高度石灰化していた。術後1週間でECMO離脱し、約1ヶ月後で退院となった。【考察】本症例では、生体弁置換術後4年という短期間で、弁が高度に石灰化し、重度のASに至った。小児では術後1年で弁葉の石灰化をきたし、短期間での再弁置換術を要する症例が報告されている。入院前のTTEでは大動脈弁描出が困難で、ASの進行の評価が不十分であった。生体弁置換術後の若年例で、症状を認めた際には、弁機能不全を念頭におき、TTEで描出不良な場合は、TEE、CTなどの他の画像検査による評価が必要である。