第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

複雑心奇形

ポスター発表(I-P03-2)
複雑心奇形

2024年7月11日(木) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (2F 多目的ホール)

座長:宮地 鑑(北里大学医学部心臓血管外科)

[I-P03-2-02] フォンタン術後遠隔期の肺血管拡張薬は有効なのか?~これまでのランダム化比較試験とJACPHR研究より考える~

石田 秀和1, 石井 卓2, 内田 敬子3, 細川 奨4, 高月 晋一5, 住友 直文3, 稲井 慶6, 福島 裕之7, 小垣 滋豊8, 山岸 敬幸3, 土井 庄三郎9 (1.大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.東京医科歯科大学 小児科, 3.慶應義塾大学 医学部 小児科, 4.武蔵野赤十字病院 小児科, 5.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 6.東京女子医科大学 循環器小児科・成人先天性心疾患科, 7.東京歯科大学市川総合病院 小児科, 8.大阪急性期・総合医療センター 小児科・新生児科, 9.東京医療保健大学)

キーワード:Fontan, 肺血管拡張薬, JACPHR

【背景】
Fontan術後の肺血管拡張薬の有効性について、これまで9つのランダム化比較試験(RCT)があるが、2つのメタアナリシスでは一貫した結論が出ていない。実臨床においてFontan術後患者に肺血管拡張薬はしばしば用いられるものの、どの薬剤を選択するべきか?どのような患者群に有効なのか?等の疑問は解決されていない。今回、先天性心疾患を伴う肺高血圧症例の多施設共同症例登録研究(JACPHR)データから、わが国のリアルワールドデータ解析を行い、これまでのRCTと合わせて、その有効性について議論したい。
【RCT】
2008年から2020年までに9編のRCTが報告されている。対象者総数は580例。投与薬剤はSildenafil 3編、Udenafil 1編、Bosentan 3編、Ambrisentan 1編、Illoprost 1編であった。運動耐容能について5編で有意な改善があり、3編で有意差が無かった。死亡例はなく、PVRやCVP、Fontan合併症をアウトカムとしたRCTはない。
【JACPHR】
2021年8月から2023年12月までにJACPHRに登録された320例のうち、登録時にFontan術が完了している48例を対象とした。左室型単心室30例、右室型18例。カテーテル検査で高肺血管抵抗と診断された年齢中央値は4.5歳(Interquartile range, IQR: 3.1-13.7)、Fontan術実施年齢2.6歳(IQR: 2.1-4.0)、診断時mPAPは13mmHg (IQR: 11-15)、Transpulmonary Pressure Gradientは7mmHg (IQR: 7-8)、PVRIは3.2 WU・m2 (IQR: 2.4-3.76)であった。投与薬剤はERA単剤8例、PDE5I単剤11例、ERA+PDE5I 8例、3剤併用4例、無投薬17例であった。
肺血管拡張薬開始・追加の前後カテデータが登録されているものが6例あった。無投薬や治療変更なし群と比較して治療開始・追加群では、mPAP、TPG、PVRIの変化量において有意差を認めなかった。
【結語】
今後、JACPHR登録数の増加と継続的なフォローアップデータの登録により、高肺血管抵抗Fontanに対する肺血管拡張薬の有効性がより詳細に解析できると考える。