[I-P03-5-03] 心室中隔欠損症を伴う大動脈弁輪拡張症の手術経験
キーワード:心室中隔欠損症, 大動脈弁輪拡張症, 成人先天性心疾患
【背景】大動脈弁輪拡張症(AAE)にはマルファン症候群などの結合織疾患や加齢が影響すると言われているが、最近ではファロー四徴症を代表とする心室中隔偏位を合併したVSDを有する疾患との関連も報告がある。【方法】2013年~2023年の間に当院でAAEに対し大動脈基部手術を施行した30例の解剖または組織学的特徴を検討した。【結果】特徴あり17例(マルファン症候群4例、大動脈二尖弁4例、bovine arch4例、高安動脈炎3例、先天性心疾患2例)に対して特徴なし13例であった。平均年齢は特徴あり51.1歳に対し特徴なしは64.1歳(p=0.02)であり、大動脈弁輪の組織学的脆弱性の可能性が示唆された。今回我々は先天性心疾患、特に膜様部中隔瘤(MSA)を有するVSDが関連したAAEを2例経験したので報告をする。【症例報告】症例1は幼少期にCoA、PDAの手術歴のある50歳男性、心腔内にVSD自然閉鎖を強く疑わせる膜様部中隔瘤(MSA)を認める感染性心内膜炎とAAEの診断で大動脈基部置換術を施行した。大動脈壁は粥状硬化性病変を認めた。症例2は53歳男性で幼少時に心疾患の指摘はなし。MSAを認めるVSDと、それに伴う右冠尖逸脱とAAEの診断で大動脈基部置換術を施行した。大動脈壁は嚢胞性中膜壊死所見を強く認めた。2例とも術後経過は良好であった。【考察】心室中隔偏位を合併したVSDを認める先天性心疾患では大動脈弁輪結合線維の脆弱性についても注意が必要と考えられる。今回我々が経験した2例は共に膜様部流出路に位置し大動脈弁輪に近接したVSDが関連する症例であった。病理学的特徴は異なっていたが共に50歳程度と比較的若年で手術を必要としており、加齢性要因よりは組織学的要因による弁輪拡張があると疑われた。【結論】MSAを有するVSDがどの程度のAAEリスクに成るかは判断できないが、AAEを含めた後天性心疾患に発展する可能性があり長期的なフォローアップを検討する必要があると考えられた