[I-P03-5-05] 右視床出血を契機に発見された未治療の単純型大動脈縮窄症の成人例
キーワード:成人先天性心疾患, 大動脈縮窄症, 人工血管置換
【背景】単純型大動脈縮窄症(simple CoA)は乳児期以降に高血圧を呈し、心雑音や頭痛等の症状から発見されることが多い。一方で診断されずに経過し未治療のままで、心不全や脳出血により半数が30代で死亡すると報告されている。今回、右視床出血を契機に発見されたsimple CoAの成人例を経験したため報告する。【症例】33歳男性。20代より大動脈二尖弁と高血圧を指摘されていたが、治療介入なく経過観察となっていた。突然右上下肢不全麻痺、頭痛、嘔吐が出現し独歩で近医受診、同日の頭部CT所見から右視床出血の診断となり脳神経外科に入院し、血圧管理とリハビリを経て後遺症なく退院となった。入院中にビリルビン高値が指摘されたため、精査目的に胸腹部造影CTを撮影したところ大動脈縮窄と肝血管腫が疑われ当院紹介となった。当院初診時点で上肢血圧125/72mmHg, 下肢血圧 90/61mmHg, ABI 0.72と上下肢の圧較差を認め、両側足背動脈は微弱であった。心エコーでは大動脈二尖弁を認めるもののASRなく心機能良好であった。造影CTにて大動脈弓部最狭部6mmと縮窄あり、周囲に多数の側副血行路を認めた。未治療成人例のsimple CoAであり、今後左側開胸による人工血管置換術を検討している。【考察・結語】成人例のsimple CoAは高血圧や左心不全による息切れ等を契機に発見されるが、側副血行路が発達している場合は無症状であることも多い。本症例は大動脈二尖弁を伴う高血圧が背景にあったため、事前に上下肢の血圧を確認しsimple CoAを鑑別に挙げていれば、脳出血を未然に防ぐことができたかもしれない。また、降圧薬内服後も上下肢の血圧差が20mmHg以上認められ、脳出血の既往もあり治療適応と判断した。ステント留置は追加治療を必要とする報告もあり、人工血管置換による修復術を選択する方針としている。