[I-P03-6-01] 大動脈弁上狭窄に対してパッチ拡大術を施行した小児と成人の3例:Doty法とBrom法の比較
キーワード:大動脈弁上狭窄, Doty, Brom
【背景】大動脈弁上狭窄(SVAS)に対するDoty法、Brom法の報告は多いが、その選択基準は未だ明確ではない。当施設で行ったDoty法2例、Brom法1例を報告し考察を加える。【症例】症例1は13歳男児、2生日でSVASを指摘、10ヶ月時に圧較差60mmHgと進行を認めたが通院が自己中断された。中学1年時に運動時胸痛あり再来、圧較差100mmHgを認め当科でDoty手術を施行した。最狭窄部径は8.9mmから16.1mmに拡大、PFV 2.1m/sに改善、ARはmild。5年後のCT検査で上行最小径は18.4mm、10年後エコーでPFV 2.9m/s, AR mildであった。症例2は18歳女性、症例1の姉。3歳時にSVASを指摘されたがその後通院が自己中断された。弟の手術を契機に15歳時に再診、最大圧較差50mmHgであったが自覚症状なく経過観察された。17歳時に労作時胸部症状あり、圧較差77mmHgと進行を認め、当科でDoty手術を行なった。最狭窄部径は10.2mmから19.2mmに拡大、PFVは1.7m/s, AR mildであった。7年後のエコーでPFV1.8m/s, AR mildであった。症例3は5歳女児、Williams症候群合併。乳児期にSVASを認めたが手術適応なく経過観察された。4歳時に左室肥大認め、最大圧較差55mmHgで手術適応と判断、当科でBrom手術を行った。最狭窄部径は4.9mmから9.9mmに拡大、PFV 2.0m/s, AR trivial、2.5年後のエコーでPFV 0.6m/s, 最大圧較差2.0mmHg, AR noneであった。【考察】圧較差に関して症例1は遠隔期にやや進行を認め、症例2と3は制御良好であった。圧較差が増大した原因は成長に伴って相対的に狭窄が進行したと考えられる。Brom法の症例3は2.5年で狭窄度の改善を認めたが、長期的な経過観察が必要である。Doty法2例とも術後AR mild認め、Brom法1例では認めなかった。3つのSinusを均等に拡大するBrom法はAR制御に有利な可能性がある。【結語】成長期を過ぎた症例へのDoty法、幼少期のBrom法は経過良好であった。AR制御に関してはDoty法よりもBrom法が優れている可能性がある。