[I-PD3-3] 小児心臓血管外科手術周術期合併症とその予防に向けて
Keywords:小児心臓血管外科, 周術期合併症, レミフェンタニル
【はじめに】心臓血管外科手術では、人工心肺装置を使用し心停止・循環停止を用いることや、術前心不全、感染症などの手術侵襲によって、心肺機能低下、末梢循環不全、高サイトカイン血症、体液バランス不均衡などによって容易に血行動態破綻へ繋がる。特に小児心臓血管外科領域においては、術後のバイタル変動は容易であり特に肺血管抵抗の上下による肺体血流比変化はICUにおける急変の理由として重要である。今回、肺体血流比の変動による急変を予防することを目的として術後管理における鎮痛鎮静管理の新旧方法を比較してみた。【対象と方法】 症例は、2023年1月~2024年3月までに当院で施行された小児心臓血管手術153例のうち、5歳未満の症例を対象とした。術後鎮痛薬としてレミフェンタニル不使用群をA群、レミフェンタニル持続投与を行った群をB群とした。鎮静方法はデクスメデトミジンを0.04~0.07μg/kg/hrを併用投与し、鎮静頓用薬としてフェノバルビタール静注薬を使用した。術後鎮静の評価は頓用薬使用の有無、カテコラミン投与などを要する術後急変の有無、CHEOPSスコアを用いて評価した。【結果】 症例は、A群/B群=26/45例、術前肺高血圧を有する症例が7/17例、身長、体重、RACHS-2 scoreに有意差は認められなかった。術後レスキュー薬使用はA群6例、B群2例、急変した症例はどちらも0例、CHEOPSスコアは、A群6.8、B群5.4で有意にB群で低値を示した。【考察】 術後鎮静のガイドラインにおいては、ベンゾジアゼピン系鎮静薬の使用を控えることと、鎮痛薬の使用、浅い鎮静などが推奨されている。今回我々の鎮痛・鎮静管理方法は簡便で有害事象などを生じず、症に特有の啼泣や力みなどに起因するICU内での急変を予防できた可能性が示唆された。【結論】 小児心臓血管外科術後管理におけるレミフェンタニルを併用した鎮静鎮痛管理は術後成績の安定に有用である可能性がある。