[I-PD3-5] 先天性心疾患の心臓手術時に留置した中心静脈カテーテルに関連した血栓の単施設前向き観察研究
キーワード:中心静脈カテーテル, 血栓, 周術期
【背景】
先天性心疾患周術期の中心静脈カテーテル関連血栓(central venous catheter [CVC] related thrombosis, CRT)に関する既報は多くが後方視検討である.我々は前向き観察研究によりCRT発生率と発生予測因子を検討した.
【方法】
単施設前向き観察研究.先天性心疾患の心臓手術時に内頚静脈へ留置されたCVCが対象.留置血管径は穿刺前に予定穿刺部を超音波検査で記録.CRTはCVC抜去翌々日までに超音波検査で診断.CRTあり(T)・なし(N)の二群で,患者背景,手術内容,周術期管理,予後,CRTによる合併症,CVC留置長,留置時間,留置血管径と断面積,留置中Ca2+,輸液中Ca濃度,(留置長*留置時間)/体表面積(DbyT [cm*h/m2])を検討した.
【結果】
2023年1月-12月に先天性心疾患の心臓手術時に内頚静脈へ留置しCRTを検索したCVC連続96件(83例)が対象.男51,月齢7.7か月(0.0-154) [中央値(範囲)].体重6.5kg(1.9-43).死亡1/83(1.2%).CRT 43(45%),1か月後のCRT残存10/43 (23%).静脈閉塞1/43(2.3%).T群はN群と比較して単心室(T 23[54%], N 12[23%], p=0.01),二期的胸骨閉鎖(T 12[28%], N 6[11%], p=0.04)が多く,輸液中Ca濃度が高かった(T 69[8-140], N 46[0-99], p<0.001).また,CVC留置時間が長く(T 106時間[21-338], N 46時間[21-174], p<0.001),DbyT (T 2301[165-377], N694[188-3906], p<0.001)が大きかった.手術内容や留置前の血管断面積に差はなかった.CVC留置時間およびDbyTの最適なカットオフ値は,97時間(感度54%, 特異度96%, AUC 0.724)と2046(感度54%, 特異度91%, AUC 0.742)だった.留置時間>97時間とDbyT>2000のオッズ比は,6.2(95%信頼区間1.6, 30, p=0.01)と5.3(95%信頼区間1.3, 26, p=0.03)だった.
【結論】
前向き観察研究におけるCRT発生率は45%で,単心室,二期的胸骨閉鎖術,高い輸液中Ca濃度でCRTが多い.心臓手術時に内頚静脈へ留置したCVCではDbyT>2000がCRT発生を予測しうる.
先天性心疾患周術期の中心静脈カテーテル関連血栓(central venous catheter [CVC] related thrombosis, CRT)に関する既報は多くが後方視検討である.我々は前向き観察研究によりCRT発生率と発生予測因子を検討した.
【方法】
単施設前向き観察研究.先天性心疾患の心臓手術時に内頚静脈へ留置されたCVCが対象.留置血管径は穿刺前に予定穿刺部を超音波検査で記録.CRTはCVC抜去翌々日までに超音波検査で診断.CRTあり(T)・なし(N)の二群で,患者背景,手術内容,周術期管理,予後,CRTによる合併症,CVC留置長,留置時間,留置血管径と断面積,留置中Ca2+,輸液中Ca濃度,(留置長*留置時間)/体表面積(DbyT [cm*h/m2])を検討した.
【結果】
2023年1月-12月に先天性心疾患の心臓手術時に内頚静脈へ留置しCRTを検索したCVC連続96件(83例)が対象.男51,月齢7.7か月(0.0-154) [中央値(範囲)].体重6.5kg(1.9-43).死亡1/83(1.2%).CRT 43(45%),1か月後のCRT残存10/43 (23%).静脈閉塞1/43(2.3%).T群はN群と比較して単心室(T 23[54%], N 12[23%], p=0.01),二期的胸骨閉鎖(T 12[28%], N 6[11%], p=0.04)が多く,輸液中Ca濃度が高かった(T 69[8-140], N 46[0-99], p<0.001).また,CVC留置時間が長く(T 106時間[21-338], N 46時間[21-174], p<0.001),DbyT (T 2301[165-377], N694[188-3906], p<0.001)が大きかった.手術内容や留置前の血管断面積に差はなかった.CVC留置時間およびDbyTの最適なカットオフ値は,97時間(感度54%, 特異度96%, AUC 0.724)と2046(感度54%, 特異度91%, AUC 0.742)だった.留置時間>97時間とDbyT>2000のオッズ比は,6.2(95%信頼区間1.6, 30, p=0.01)と5.3(95%信頼区間1.3, 26, p=0.03)だった.
【結論】
前向き観察研究におけるCRT発生率は45%で,単心室,二期的胸骨閉鎖術,高い輸液中Ca濃度でCRTが多い.心臓手術時に内頚静脈へ留置したCVCではDbyT>2000がCRT発生を予測しうる.