The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Panel Discussion

Panel Discussion 5

Thu. Jul 11, 2024 9:40 AM - 11:10 AM ROOM 5 (4F 413+414)

座長:前野 泰樹(雪の聖母会聖マリア病院 新生児科)
座長:吉松 淳(国立循環器病研究センター循環器病周産期センター 産婦人科)

[I-PD5-2] 抗SS-A抗体陽性妊婦における先天性心ブロックを発症していない胎児の管理

影山 操1, 多田 克彦2, 塚原 紗耶2, 宮木 康成3, 馬場 健児4 (1.岡山医療センター 新生児科, 2.岡山医療センター 産科, 3.Medical Data Labo, 4.岡山大学病院 小児科)

Keywords:抗SS-A抗体, 52kD, 胎児房室伝導時間(AVCT)

【緒言】抗SS-A抗体陽性女性から出生する児に発症する新生児ループスの中でも、特に先天性心ブロック(CHB)はその発症率は低いが重症な病態であるため母胎管理は大きな課題である。CHBを発症した胎児の治療については多くの報告・研究があるが、CHB非発症胎児については2013年の「抗 SS-A抗体陽性女性の妊娠に関する診療の手引き」にも記載はない。当院での母胎管理および胎児房室伝導時間(AVCT)データを紹介する。
【母胎管理】1)初診時に母体の抗52kD抗体を検査,2)妊娠16~26週は毎週,それ以降は隔週でAVCTを測定(2009年-),胎児AVCT:左心室内で左室流入波形と大動脈流出波形を同時に描出し,左室流入波形のA波の開始から大動脈流出波形の開始までの時間。3)胎児心拍数ホームモニタリング(2024年-)。
【AVCTデータ】対照(抗 SS-A抗体陰性):121例(n=121),抗52kD抗体陰性:8例(n=76),抗52kD抗体陽性:18例(n=251)の一次回帰直線はそれぞれ、y=0.775 x + 93.315, y=0.742 x + 93.106, y=0.792x + 102.139, (x, 妊娠週数; y, AVCT)であり、共分散分析で比較すると3群間の傾きに差はなかった。抗52kD抗体陽性胎児の回帰直線のy切片は,対照および抗52kD陰性より有意に延長していたが,対照と抗52kD抗体陰性のy切片に差はなかった。以上よりAVCTは全症例で妊娠週数に伴い漸増するが、抗52kD抗体陽性例では妊娠週数に関わらずその他の群より常に約10 msの一定の伝導遅延が生じている可能性がある。なおAVCTが急に延長し関連大学病院へ紹介した除外胎児は1例で、抗52kD抗体陽性、発症時期は妊娠20週であった。
【考察】抗SS-A抗体陽性妊婦において先天性心ブロックを発症していない胎児の胎児期管理および新生児期管理に明確な指針はない。当院では実際に抗52kD抗体陽性例においてAVCTの延長、胎児CHB発症を認め、特にハイリスクと考え厳重に管理している。