[I-PD5-4] ヒドロキシクロロキンを用いた自己免疫性先天性心ブロックの予防
キーワード:ヒドロキシクロロキン, 抗SS-A抗体, 完全房室ブロック
ヒドロキシクロロキン(HCQ)は全身性エリテマトーデス(SLE)の標準的治療薬で妊娠中にも使用することが推奨されている。日本では長年未承認薬であったが2015年にSLEと皮膚エリテマトーデスに対して保険承認が得られた。抗SS-A抗体はシェーグレン症候群の患者の約70%、SLEの約10%に認められる自己抗体で、健常人でも約1%が陽性である。自己免疫性先天性房室ブロックは抗SS-A抗体を有する母親の約2%の児で発症し、ペースメーカー留置率は約70%、致死率は約20%である。本邦では年間で約100児が新たに罹患していると推測される。前児が罹患した母親は次の妊娠での再発率は16~18%と約10倍になるため抗SS-A抗体合併妊娠でもハイリスクに分類される。胎児の刺激伝導系が機能的になる妊娠16週に母体の抗SSA抗体が胎盤を通過し胎生期の心筋細胞の表出しているSSA/Ro抗原と結合し、Toll-like receptor(TLR)-7を介し1型インターフェロン(IFN)が活性化する。その後TGF-βによる線維化が加わり、妊娠18週から26週に不可逆性の完全房室ブロックが完成する。HCQは胎盤通過性があり、TLR-7阻害し1型IFNの産生を抑制することから、本疾患の予防効果が期待されている。海外の臨床試験(PATCH)で、ハイリスクの母親にHCQ400mg/日を妊娠10週までに投与することにより再発率が約半減することが示された(J Am Coll Cardiol. 2020;76:292-302)。さらに2020年の米国のガイドラインでHCQの使用が記載された。我々はハイリスクの母親を対象にオープンラベル単群の多施設共同の臨床試験を行っている(登録症例数26例、施設数11、登録終了2024年8月31日)。2023年度は成育疾患克服等総合研究事業として薬事申請までの開発計画を立案した。本講演では、抗SS-A抗体陽性妊娠の心臓超音波検査の実施状況および抗SS-A抗体陽性妊娠に対するHCQの処方状況に関する実態調査の結果についても触れたい。