第60回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション6(I-PD6)
大動脈弁形成時代におけるRoss手術の位置付け

2024年7月11日(木) 13:10 〜 14:40 第5会場 (4F 413+414)

座長:盤井 成光(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
座長:菅野 幹雄(徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野)

[I-PD6-1] 15歳未満Ross手術の遠隔成績

盤井 成光, 今井 健太, 小森 元貴, 富永 佑児, 柴垣 圭佑, 沓澤 梨恵子, 川合 祥太 (国立循環器病研究センター 小児心臓外科)

キーワード:Ross手術, 大動脈弁疾患, 大動脈弁形成術

【目的】近年、小児期大動脈弁疾患においても大動脈弁形成術の成績向上が報告されつつある中で、小児期Ross手術の手術成績や遠隔期の問題点を再評価し、“Ross手術の位置付け”を検討した。【対象】1992年以降、大動脈弁疾患に対し15歳未満でRoss手術を行った66例(うちRoss-Konno手術16例)を対象とした。診断はcongenital AS 47例、AsR 5例、AR 11例、IE 3例で、経皮的大動脈弁バルーン形成術(PTPA)17例、外科的大動脈弁形成術7例、両方8例に先行し、先行介入からRoss手術までの期間はmedian(IQR):5.7(0.8-7.2)年であった。Ross手術時年齢は6.2(1.3-10.7)才で、右室流出路再建はmonocusp patch 37例、noncusp patch 16例、homograft 6例、tri-valved ePTFE graft 3例、他4例であった。【結果】術後観察期間はmean±SD:16.2±9.2年で、手術死亡4例(6.1%、いずれもLOS)、遠隔死亡2例(3.2%、拘束型心筋症1例、感染1例)。累積生存率は10年92%、20年90%で、1才未満手術例(16例)と1才以上手術例(50例)を比較すると20年生存率は68% vs 97%と有意に1才以上手術例で良好であった(p<0.01)。術後AR moderate以上を15%(8/54例)に認めたが、手術時年齢等には関係なかった。左室流出路再手術回避率は10年93%、20年90%であった。また右室流出路再手術回避率は10年89%、20年73%で、右室流出路再建術式には関係なかった。その他、adverse eventとしては周術期の冠虚血2例、ペースメーカー植込み2例(1例重複)があり、遠隔期には上室性不整脈に対するカテーテルアブレーションを3例に行った。【結語】小児期大動脈弁疾患に対するRoss手術の成績は、特に1才以上手術例で良好であった。また再手術回避率も20年で70%以上と十分に許容できるものであった。以上より、可能であればPTPAや弁形成手術で待機し、1才以降にRoss手術を行うストラテジーが良いと思われる。