The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 3

Thu. Jul 11, 2024 1:10 PM - 2:40 PM ROOM 4 (4F 411+412)

座長:古道 一樹(東京都立大塚病院 小児科)
座長:石田 秀和(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)

[I-SY3-3] プロスタグランジンE2受容体EP4発現におけるエピゲノム制御機構の検討

岡 沙由稀1, 黒滝 大翼2, 菊池 健太2, 中山 俊宏1,3, 横山 詩子1 (1.東京医科大学 細胞生理学分野, 2.熊本大学 国際先端医学研究機構 免疫ゲノム構造学研究室, 3.東京医科大学 小児科・思春期科分野)

Keywords:動脈管, EP4, 転写制御領域

【背景】プロスタグランジンE2(PGE2)はEP4受容体を介して動脈管を開存させることが知られている。一方で、EP4欠損マウスは動脈管開存症を発症することから、PGE2-EP4シグナルが動脈管閉鎖にも関与することが報告されている。しかしながら、胎生期の動脈管におけるEP4の発現制御機構は未解明である。【目的】動脈管でのEP4発現様式と転写制御領域を検討することを目的とした。【方法】Ptger4-IRES2-nlsLacZ マウスを作製し、胎生11日(E11)から出生後14日(P14)にかけてのEP4発現をX-gal染色で評価した。EP4の発現制御機構の検討のため、E14とE18の野生型マウスから上行大動脈と動脈管組織を採取し、bulk RNA-seqとscRNA-seqを行い、E14の上行大動脈と動脈管組織を用いてATAC-seqとCUT&Tagを行った。また、Ptger4上流部分の欠損マウスを5系統作製した。【結果】X-gal染色では胸腔内臓器のうちE14以降の動脈管でのみEP4発現を認め、その発現はE18とP0で最大となり、出生後は発現が低下消失した。qPCRではE14の動脈管におけるEP4発現が上行大動脈の13±1.8倍であった(n=5、p<0.01)。bulk RNA-seqではTfap2bHoxb5Foxf1等の転写因子が動脈管特異的に発現していた(>5.0-fold change、n=3)。scRNA-seqではEP4を発現する動脈管特異的な細胞群が同定され、この細胞群で上記転写因子の高発現を認めた。Ptger4上流の5か所でATAC-seqとCUT&Tagで一致する顕著なピークを認め、さらに4つのピークを含む約900kbpの領域では小さなピークの連続を認めた。モチーフ解析では約900kbpの領域に上記転写因子が結合する可能性が示唆された。約900kbpの領域の欠損マウスは、P0の動脈管でEP4発現がほぼ消失していた。このマウスは動脈管開存症を発症してP2までに全例が死亡し、EP4欠損マウスと同じ表現型であった。【結語】動脈管特異的なEP4発現がE14より認められ、Ptger4上流の約900kbpがEP4転写制御領域として関与する可能性が示唆された。