[I-SY3-4] トリオ全エクソン解析によるHeterotaxyの遺伝学的基盤の考察
キーワード:Heterotaxy, 全エクソン解析, 原発性線毛機能不全症
【背景】Heterotaxy(HTX)は発生段階での左右軸決定の異常によって生じ、原発性線毛機能不全症(PCD)に代表される線毛異常との関連が知られている。しかし、HTXのうち難治性副鼻腔炎・中耳炎・慢性咳嗽などのPCD症状を呈するものは一部に過ぎず、多くが病因不明である。【方法】当院で2012年~2017年に診療したHTX症例とその両親のトリオに対して全エクソン解析を行った。候補バリアントは、(1)バリアント頻度<0.001(常染色体潜性遺伝(AR)では<0.01)、(2)CADD>20、(3)ClinVarでBenign/Likely benignでない、をすべて満たすものとし、既報や遺伝形式と合わせて病原性を判断した。【結果】対象は18例で、右側相同12例(無脾症10例)、左側相同6例(全例多脾症)、全例が複雑心奇形を伴い、16例がFontan手術、2例が心内修復術を受けた。PCD症状は2例に認めた。候補バリアントのうちHTXの既報遺伝子に注目すると、1例に左右非対称性を誘導するNodalのヘテロ変異、別の1例(PCD症状あり)に運動線毛の構成要素でPCDの原因遺伝子でもあるDNAH5の複合ヘテロ変異を認めた。また、全例が孤発例であることからARもしくはde novo変異(DNV)に絞ると、35のバリアント(AR 19、DNV 16)が抽出され、とくに一次線毛形成に関わる遺伝子(SYNE2、PTCH1)にAR形式の変異を認めた。【考察】HTX既報遺伝子のバリアント同定率は11%(2/18例)で既報と同程度であった。HTXの原因遺伝子には、(1)左右軸決定に直接関わる因子のほか、(2)運動線毛異常であるPCDに加え、(3)一次(非運動)線毛異常(ciliopathy)ともオーバーラップがあることが窺えた。一方、半数以上が病因不明で、多因子遺伝や非遺伝要因の関与も示唆される。