[I-SY4-2] 肺動脈性肺高血圧症研究における網羅的解析の応用
キーワード:網羅的解析, プロテオーム解析, 肺高血圧症
網羅的解析には疾患の原因遺伝子を検索するゲノムDNAに対する全エクソーム解析や、細胞や組織の遺伝子や蛋白質の発現を網羅的に解析するRNAシークエンス, プロテオーム解析、細菌叢と病態との解析を行うために細菌のDNAを対象にしたメタゲノム解析などのさまざまな手法があり、これまで多くの疾患の病態解析に用いられてきた。肺高血圧症の病変形成には多種多様な細胞や分子が関与しており、その病変形成機序は複雑である。これまで様々な病変形成の鍵となる分子が知識ベースで抽出されて検証されてきたが、そうした既報の知識にとらわれず、広く病態に関わる分子を探索することを可能にする点が網羅的解析の強みである。現在我々は慢性肺疾患モデルマウスにおける肺高血圧症の進行について、プロテオーム解析を用いてその病態に関与するパスウェイや蛋白の同定を試みている。また、叢状病変を形成するSugen/Hypoxiaモデルラットにおいて、レーザーマイクロダイセクション法にて病変組織だけを選択的に取得したうえで、取得した微量のタンパク質を用いたプロテオーム解析による病変形成の進行に関わる分子の探索に取り組んでいる。本シンポジウムではこれらの研究および、ゲノム上でのタンパク質とDNAとの相互作用部位を網羅的に解析するChIPシークエンスを用いた研究を紹介し、肺高血圧症研究における網羅的解析の可能性について議論したい。