[I-SY4-3] 門脈体循環シャントに伴う肺高血圧の背景と実態
Keywords:門脈体循環シャント, 肺高血圧症, 遺伝学的背景
【はじめに】門脈体循環シャント(PSS)は門脈と体静脈にシャントを有する疾患の総称で、先天性と二次性に分類される。致死的な合併症として肺高血圧症(PAH)が挙げられる。【Porto-Pulmonary Hypertension (PoPH)】一般的にPoPHは門脈圧亢進に伴うPAHを意味するが、その本態はPSSの存在にある。つまり、PoPHにおいて必ずしも門亢症が先行するわけではない。PSSによる心拍出量の増加(肺血流増加)やPSSを介する血管作動物質の全身への伝播がその主体と考えられる。九州大学病院における先行研究では先天性門脈体循環シャント(CPSS)の約20%にPAHが合併しており、死亡例は全例がPAH合併例であった。今回、同施設で2005年以降に診断された31例のCPSSについて検討したところ、6例(19%)にPAHがみられた。Non-PAH群も含めて死亡例はなく良好な転帰であることがわかった。この背景にはCPSSの早期診断や早期治療介入、肺血管拡張剤の登場があると考えられる。成人のPoPH研究では血中エンドセリン濃度上昇が報告されており、エンドセリン受容体拮抗薬の有効性も示されている。PAHの出現を予防するという意味で、CPSSが診断された場合はなるべく早期にシャントに対する治療を行うべきと考えられ経皮的カテーテル治療や外科結紮がその選択肢としてあがる。肝内門脈欠損例については肝臓移植の検討も必要であろう。【遺伝学的背景】CPSSの原因遺伝子特定にはまだ至っておらず、単一遺伝子疾患ではないと考えられる。PoPHの発症メカニズムを考えるとCPSS全例でいずれはPAHを発症すると予測されるが、必ずしもそうではない臨床的印象を持っている。つまり、CPSSからPAHの発症へは何かしらの遺伝学的背景の存在が示唆される。今後の研究が明らかにすることを期待したい。【おわりに】CPSSにPAHを合併するPoPHでは以前は致死的ではあったが、最近の研究結果では必ずしもそうではなく、コントロール可能である可能性がある。