[I-SY4-5] ダウン症候群モデルマウスを用いた肺高血圧症の病態メカニズム解析
Keywords:ダウン症候群, 肺動脈性肺高血圧症, EGR1
【背景と目的】
ダウン症候群 (DS)は先天性心疾患や肺動脈性高血圧症 (PAH)の合併が多いことが知られている。DSにおけるPAH発症には、呼吸器合併症による低換気を含めた様々な病態が関与しており、血管内皮細胞の機能不全も一因と考えられている。我々はこれまで、DS患者由来iPS細胞を用いた研究により、21番染色体上のDYRK1A遺伝子の発現上昇がEGR1経路を活性化し、肺血管内皮細胞障害を引き起こすことで、DSにおけるPAH発症に関連していることを報告した。本研究の目的は、DSモデルマウスを用いて、これまでのin vitro研究の結果をin vivoへと発展させ、EGR1経路の調節によってDS関連PAHの治療法を確立することである。
【方法】
Ts1Cje マウスは、DYRK1A を含むマウス16番染色体の部分トリソミーマウスである。Ts1Cje マウスにSU5416を腹腔内投与し、3週間10%酸素下での飼育後に1週間通常大気下で飼育した。PAHの評価として、右室圧/左室圧の測定、右室/左室重量の測定、Elastica Van Gieson (EVG)染色や免疫染色による肺動脈の組織学的所見を用いて評価した。統計解析はRを用いた。P<0.05を統計学的有意差有りとした。
【結果】
負荷を行ったTs1Cjeマウス(Ts+)の右室圧/左室圧比は0.53±0.057、負荷を行った同腹野生型マウス(WT+) 0.31±0.011、負荷を行っていないTs1Cjeマウス(Ts-) 0.27±0.023とTs+群で有意に上昇した。右室/左室重量比はTs+群、WT+群、Ts-群で有意な差はなかった。肺動脈の肥厚血管数はTs+群 8.8±1.3、WT+群 5.5±1.1とTs+群で有意に増加、免疫染色でのEGR1陽性血管数もTs+群 47.8±6.0、WT+群 7.2±3.2とTs+群で有意に増加していた。
【結論】
Ts1CjeマウスはWTマウスよりPAHを来たしやすく、肺動脈リモデリングも進行していた。iPS細胞研究で同定されたEGR1経路は、DSマウスモデルにおいても亢進しており、今後、EGR1経路を調節する候補薬を用いて、PAHに対する治療効果を評価する予定である。
ダウン症候群 (DS)は先天性心疾患や肺動脈性高血圧症 (PAH)の合併が多いことが知られている。DSにおけるPAH発症には、呼吸器合併症による低換気を含めた様々な病態が関与しており、血管内皮細胞の機能不全も一因と考えられている。我々はこれまで、DS患者由来iPS細胞を用いた研究により、21番染色体上のDYRK1A遺伝子の発現上昇がEGR1経路を活性化し、肺血管内皮細胞障害を引き起こすことで、DSにおけるPAH発症に関連していることを報告した。本研究の目的は、DSモデルマウスを用いて、これまでのin vitro研究の結果をin vivoへと発展させ、EGR1経路の調節によってDS関連PAHの治療法を確立することである。
【方法】
Ts1Cje マウスは、DYRK1A を含むマウス16番染色体の部分トリソミーマウスである。Ts1Cje マウスにSU5416を腹腔内投与し、3週間10%酸素下での飼育後に1週間通常大気下で飼育した。PAHの評価として、右室圧/左室圧の測定、右室/左室重量の測定、Elastica Van Gieson (EVG)染色や免疫染色による肺動脈の組織学的所見を用いて評価した。統計解析はRを用いた。P<0.05を統計学的有意差有りとした。
【結果】
負荷を行ったTs1Cjeマウス(Ts+)の右室圧/左室圧比は0.53±0.057、負荷を行った同腹野生型マウス(WT+) 0.31±0.011、負荷を行っていないTs1Cjeマウス(Ts-) 0.27±0.023とTs+群で有意に上昇した。右室/左室重量比はTs+群、WT+群、Ts-群で有意な差はなかった。肺動脈の肥厚血管数はTs+群 8.8±1.3、WT+群 5.5±1.1とTs+群で有意に増加、免疫染色でのEGR1陽性血管数もTs+群 47.8±6.0、WT+群 7.2±3.2とTs+群で有意に増加していた。
【結論】
Ts1CjeマウスはWTマウスよりPAHを来たしやすく、肺動脈リモデリングも進行していた。iPS細胞研究で同定されたEGR1経路は、DSマウスモデルにおいても亢進しており、今後、EGR1経路を調節する候補薬を用いて、PAHに対する治療効果を評価する予定である。