The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Oral Session

心筋心膜疾患

Oral Session (II-OR13)

Fri. Jul 12, 2024 8:00 AM - 9:00 AM ROOM 6 (4F 401-403)

座長:藤原 優子(町田市民病院 小児科)
座長:山村 健一郎(九州大学病院 小児科)

[II-OR13-04] Takotsubo cardiomyopathy associated with influenza encephalopathy in a pediatric case

五味 遥, 佐藤 智幸, 奧村 一輝, 森田 裕介, 古井 貞浩, 岡 健介, 松原 大輔, 横溝 亜希子, 関 満, 田島 敏広 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)

Keywords:たこつぼ型心筋症, Speckle tracking心エコー, インフルエンザ脳症

【はじめに】たこつぼ型心筋症は身体的または精神的ストレスを誘因とする一過性の左室壁運動障害である。胸痛や呼吸困難で発症し心電図検査でST異常を伴うため、急性冠症候群との鑑別を要する。成人と比較し小児では報告が少なく、誘因や経過には不明な点も多い。今回、インフルエンザ脳症によるたこつぼ型心筋症を経験した。
【症例】11歳男子。注意欠如・多動症あり。入院前日にインフルエンザA型と診断され、オセルタミビルを内服していた。入院当日、全身性の強直間代性けいれんと意識障害の遷延があり、頭部CTでのびまん性の脳浮腫から、インフルエンザ脳症と診断した。ペラミビルの静注、ステロイドパルス療法を開始し、入院2日目に意識状態は改善傾向であった。しかし、胸痛が出現し12誘導心電図でII、III、aVF、V5、V6でST上昇と、トロポニンT陽性を認めたため、急性冠症候群を疑い緊急心臓カテーテル検査を施行した。冠動脈病変はないが左室心尖部に限局した壁運動低下があり、たこつぼ型心筋症と診断した。Speckle tracking心エコー (STE)でも心尖部の壁運動低下を認めた。左室駆出率の低下(40%)があり、ドブタミンとミルリノンによる循環サポートと、心室内血栓予防目的でヘパリンの持続静注を開始した。心電図異常は経時的に改善し、STEでも心尖部の壁運動低下は発症6日目に正常化した。エナラプリルを導入し、発症13日目に退院した。退院後も心機能の再増悪はなく経過良好である。
【考察】小児でも全身状態悪化などのストレスにさらされた際はたこつぼ型心筋症を鑑別にあげる必要がある。既報では頭蓋内の出血や腫瘍に伴うものが多いが、脳症も誘因となりうる。本症例では胸痛の訴えが精査の契機となったが、特に鎮静下では症状の訴えに乏しい可能性があり、心電図異常や心機能にも注意を要する。診断には心臓カテーテル検査での左室造影に加え、STEも有用であり、心機能の長期フォローにも適する。