[II-OR14-02] 生体腎移植後に心機能が回復した3例
キーワード:腎移植, 心機能, 前負荷
【背景】透析患者の64%が左室機能異常を呈し、死亡原因の第一位が23.9%で心不全である。小児において腎臓移植後の心臓の変化については未だに報告が少ない。生体腎移植後に心機能が回復した慢性心不全3症例を経験したため報告する。【症例1】6歳女児。Denys-Drash症候群で6歳時に生体腎移植を施行された。4歳時に左室駆出率(以下LVEF)低下を指摘された。中等度僧帽弁逆流(以下MR)、左室拡大(LVDd 40mm, 125% of normal)、LVEF 43%、左室拡張能(以下E/e‘) 10.9、心室中隔径(以下IVSd) 6.3mm、血圧100/50mmHgであり、植後14日にtrivial MR、LVEF 58%へと改善し、現在もLVEFは保たれている。【症例2】6歳男児。両側低形成異形成腎に対して4歳時に生体腎移植を施行された。術直前からのLVEF低下を認め、mild MR、左室拡大(LVDd 40mm, 125% of normal)、LVEF 40%、E/e‘ 8.0、IVSd 7.2mm、アムロジピン内服下で血圧 106/70mmHgだった。術後2カ月にてLVEFは50%と改善した。術後から2年6カ月間β遮断薬による抗心不全療法を継続し、現在もLVEF は良好である。【症例3】9歳男児。Denys-Drash症候群で6歳時に生体腎移植を施行された。カルベジロール0.mg/kg/日内服しLVDd 28.9mm、LVEF 48%、E/e‘ 9.3、IVSd9.8mm(+6.9SD)、だったが、術後半年でIVSd 7.4mm、LVEF 54%へと改善し、1年後にはLVEF 75%と更に改善した。【考察】腎移植後の心機能の改善には1.前負荷の軽減、2.貧血改善に伴う心仕事量の軽減、3.心膜の化学的炎症や心筋代謝の変化の要因となる尿毒症性物質の除去、4.尿毒症性心筋症からの回復、5.腎機能改善による血管拡張物質の増加などが挙げられる。これらの結果、術後早期からLVIDdの縮小や左室肥大の改善、駆出率の増加が認められる。回復時期は症例1のように術直後より回復を示すものから緩徐な回復を示す報告もある。心機能の低下は必ずしも腎臓移植の禁忌にはならず、移植を進めるべきである。