[II-OR21-03] 完全大血管転位症の術前管理におけるBASの必要性とその方法
キーワード:TGA, BAS, 周術期管理
【はじめに】完全大血管転位症(TGA)に対するBASの施行基準は施設により異なる。【目的】当院におけるTGAの術前管理を後方視的に検討し、BASの必要性とその方法について検討した。【対象】2013年~2023年で、当院で新生児期にJatene手術を施行したTGA I型およびII型の12例。【方法】BAS施行群(B)と非施行群(N)にわけ、以下の項目を検討。出生時のSpO2、ASD径とBAS後の径、BAS施行の日齢、方法、経過中のO2、N2、NOの使用状況と、ドパミン使用状況、浮腫の程度(レントゲンで皮下を計測mm)、手術日齢と術後ICU滞在時間。値は中央値で記載。【結果】B 8例、N 4例。出生時SpO2(%)はB:N=73(45~93):84(70-90)でBの5/8例で100%酸素を4/8例でNOを使用されていた。出生時ASD径(mm)はB:N= 2.9(1.8-3.3):5.6(3.9-11.4) (p=0.39)と小さい傾向があった。日齢0.5(0-2)に全例pull back BASを施行されており、balloon size(cc)は1.4(1-1.5)で、4/8例で1.5ccが使用されていたが、BAS後のASD径は5.0(4.4-6.2)mmとNと同程度だった(p=0.35)。Bの5/8例でBAS後も酸素が必要だった一方で、待機中にhigh flow症状が急速に進行し7/8例でBAS後2-8日に N2が開始、ドパミン(γ)も全例で使用されていた(4.5(2.5-5))。皮下浮腫(mm)はB:N=25(15-32):19(10-25)とNで軽い傾向があり(p=0.23)、手術日齢はB:N=8.5(6-12):11.5(7-15)と、Nで待機時間が長い傾向であった(p=0.30)が、挿管、N2、カテコラミン使用例はなく、術後ICU滞在時間(日)も短い傾向があった(B:N=19(8-37):9(7-16))。【考察】循環動態の急激な変化を回避するために、過度なASD拡大は避けたいが、pull back 法のBAS後のASDは非施行症例と同等の大きさであり適度であったと思われる。BAS非施行症例は少ない介入で待機中安定した状態が維持でき術後回復も早い傾向があり、BASは酸素投与など非侵襲的処置で適度なSpO2が維持できない限られた症例に行うことが望ましいと考える。