[II-P01-6-03] 左室の発育不全を伴った拡張型心筋症の長期経過の一例
キーワード:拡張型心筋症, 肝硬変, 心臓移植
加齢に伴う左室の発育が乏しく、重度右心不全を呈した拡張型心筋症 (DCM)の一例について、剖検所見を含め臨床経過を報告する。(症例)20歳 女性 在胎28週1日、1052g、帝王切開で出生した。RDSを認め出生後呼吸管理されたが、神経学的後遺症はなく退院した。生後7か月、啼泣時にチアノーゼを認め、胸部X線写真で心拡大、心エコー検査で左室駆出率 (LVEF)低下を指摘された。左室拡張末期径 (LVDd) 34mm (123%N), EF 36%, CTR 58%, BNP 1490であった。心筋生検では、右室心筋細胞の肥大、核の大型化、中等度の線維化を認めDCMに矛盾しない所見であった。利尿剤、エナラプリル、ジゴキシンが開始となり、LVDd 27mm(100%ofN) LVEF 57% BNP 46に改善した。1歳6か月、β遮断薬を導入した。右心室 (RV)の拡大、収縮能低下を認めるようになった。10歳、RV拡大が進行し、BNP450に上昇した。11歳、心臓カテーテル検査で、CVP12mmHg, 左室拡張末期容積 59.1ml (67%N), LVEF52%, 右室拡張末期容積99.5ml (115%N), RVEF 33%であった。13歳、心移植登録を行った。RV拡大、RV菲薄化、心嚢液貯留が進行した。16歳の心カテでCVP18mmHgであった。三尖弁輪が拡大し、右室波形は右房波形と同じで、右心室の機能的な収縮はなかった。 AST、ALT、T-bil の上昇があり、利尿剤増量で低下した。18歳、心嚢液が大量に貯留(CTR85%)し、入院加療によるナトリウム添加輸液、利尿薬の持続点滴、SGLT2の投与により消失した(CTR64%)。輸液を中止すると高K血症による徐脈があり、SGLT2を減量した。グレン手術等も考慮されたが、心房内血栓、肝・腎機能低下、左室拡張期圧の上昇のため、適応なしと判断された。敗血症を発症し、多臓器不全のため永眠した。剖検所見で、右室の脂肪変性と肝硬変がみられた。(家族歴)姉1歳心筋疾患で死亡。父30歳代で僧帽弁形成術。遺伝子検査で異常なし(考察)長期の右心不全は肝硬変を惹起する。