[II-P01-6-08] A case of a child with Takotsubo Cardiomyopathy induced by adrenaline-containing local anesthetics.
Keywords:たこつぼ型心筋症, アドレナリン, 心筋障害
【背景】たこつぼ型心筋症は、急性心筋梗塞に類似した症状・検査所見を伴うが、冠動脈に有意な狭窄はなく、冠動脈の支配領域を超えて拡がる左心室の壁運動異常を認める病態を総称した症候群である。小児のたこつぼ型心筋症はまれだが、アドレナリン投与が原因で本症が発現する可能性に留意する必要がある。【症例】1歳10か月男児。頭蓋骨早期癒合症の術中、20万倍希釈アドレナリン含有リドカインを頭皮に局所注射した直後に、収縮期血圧200mmHg・心拍数180回/分に上昇した。血圧上昇・頻脈は数分で軽快したが、手術終了し抜管後にSpO2が低下し、酸素投与を行った。胸部X線で軽度心拡大および肺うっ血があり、心臓超音波検査で心基部の収縮低下はないが中部から心尖部にかけて限局性の壁運動低下(LVFS 21%)を認めた。心電図上不整脈はなかったがV2・V3誘導で陰性T波を認め、血液検査はCK-MBおよびトロポニンTが上昇しており、心筋虚血を示唆する所見だった。アドレナリン投与でたこつぼ型心筋症を発症し、軽度肺水腫を合併したと考えた。バイタルサインは安定していたため、酸素投与と利尿剤投与のみで加療し、術翌日から心機能は経時的に改善し、退院後1か月時点で壁運動は正常化した。心電図は術後3日目にT波は陽性化した。【考察】たこつぼ型心筋症は、一般的に精神的・肉体的ストレスやカテコラミンが誘因となりうると言われ、微量のカテコラミンであっても、一定の条件がそろった状況下では心筋障害を生じうるとされる。治療目的のアドレナリン投与に伴い本症を発症した報告は成人例では散見されるが、小児においてもアドレナリン投与後に原因不明の急性心筋梗塞様の所見を認める場合は、本症を鑑別疾患として考える必要がある。