[II-P02-1-04] 心房頻拍と神経発達症に隠されていたカテコラミン誘発多形性心室頻拍
キーワード:CPVT, AT, 運動負荷心電図
【背景】カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は、運動や情動の変化、あるいはカテコラミン投与で致死的不整脈が誘発され、突然死の原因となりうる稀な疾患である。遺伝子異常としてリアノジン受容体(RyR2)が報告されており、CPVT発症は10歳前後が最も多い。乳幼児では典型的な症状の出現前に上室性不整脈が合併・先行することがあり、神経発達症の合併もみられる。今回、乳児期に心房頻拍(AT)を発症し、思春期に行われた運動負荷心電図で診断に至ったCPVTの男児例を経験した。【症例】15歳男児、自閉スペクトラム症で支援学級に通級中。失神の既往や特記すべき家族歴はない。1歳時に有熱性けいれんを契機に異所性ATと診断された。フレカイニド・プロプラノロール内服でコントロール困難だったため、2歳時にカテーテルアブレーションを行われたが、ATは完全には消失しなかった。薬剤調整を経て、6歳以降はビソプロロールとフレカイニド内服で外来管理を継続した。6-7歳時に行われた運動負荷心電図では病的な心室性不整脈の誘発はなかった。Holter心電図では深夜から朝方を中心にHR 130~200 bpm前後の上室性頻拍が散発していたが自覚症状に乏しく、経過中にBNP上昇や心機能低下もなく経過した。13歳時の運動負荷心電図で、負荷10分、HR 140 bpm以降から多形性心室期外収縮(PVC)と、一拍ごとに QRS波の軸が 180°変化する二方向性心室頻拍(VT)の所見が得られ、遺伝子検査でRyR2の変異を認めCPVTと確定診断した。【考察・結語】自閉スペクトラム症と乳児期発症の難治性ATを合併したCPVTの男児例を経験した。6-7歳時の運動負荷心電図やホルター心電図で多形性PVCや二方向性VTは確認されなかったが、年少児ではRYR2が未発達であることに加え、元来穏やかな性格で活動性が高くなかったことやβ遮断薬・フレカイニドの内服がCPVTの症状をマスクしていた可能性がある。