[II-P02-6-08] 劣性栄養障害型表皮水疱症に合併した心不全の治療に難渋した拡張型心筋症の一例
キーワード:劣性栄養障害型表皮水疱症(RDEB), 拡張型心筋症, 心不全
【背景】劣性栄養障害型表皮水疱症(RDEB)は7型コラーゲンの異常により難治性の水疱やびらん、潰瘍を生じ、病変からの蛋白漏出や食道狭窄による摂食不良から慢性低栄養・貧血をきたす。合併症として若年での有棘細胞癌、近年では拡張型心筋症(DCM)の報告が散見される。今回我々は、RDEBの経過中に重症DCMを合併し、治療に難渋した一例を経験した。【症例】13歳男子。生下時から皮膚のびらんを認め1歳時にRDEBと診断、皮膚科で加療され9歳より慢性貧血、慢性炎症、低栄養、食道狭窄に対して小児科、小児外科が介入していた。入院約2週間前より咳嗽が出現、呼吸苦、下痢をきたし入院した。心胸郭比 67%の心拡大と肺うっ血を認め、左室収縮は全周性に低下(EF=17%)、BNP 2715 pg/mlであった。入院後は心不全治療(利尿剤、内服強心薬、ACE阻害薬、酸素吸入)及び輸血を行い、栄養補助飲料による補充も試みたが徐々に経口摂取不良が増悪し、胃管による経管栄養を開始した。皮膚病変のため心電図モニターは装着できず、中心静脈路確保や呼吸デバイスの使用も困難だった。入院30日目に腎前性腎不全を合併しACE阻害薬を中止、補液により腎機能は回復したが肺うっ血をきたすなど水分調整も困難で、セレンやカルニチン補充にも反応は乏しく、EFが20%前後から回復することはなかった。入院54日目にSpO2低下から徐脈、心肺停止となり蘇生処置で心拍再開し人工呼吸器と末梢点滴からのカテコラミン投与で管理された。その後はDNRの方針となり入院56日目に永眠された。【考察】RDEBに伴うDCMの発症の原因には、セレンやカルニチン欠乏、輸血による鉄過剰症、慢性炎症などが考えられているが明確な機序は不明である。しかし早期からの低栄養の予防や心臓検診を行うことが重要であると考えた。