[II-P02-6-10] 当院における小児期肥大型心筋症(HCM)・心筋肥大の中期予後
キーワード:肥大型心筋症, 心筋肥大, 小児期
【背景と目的】小児期肥大型心筋症(HCM)・心筋肥大の中期経過・予後についての報告は少ない.また初期のHCMと二次性心筋肥大の鑑別も難しい.当院で小児期にHCMと診断した例,心筋肥大と診断した例各々の臨床経過を検討し,臨床像を明らかにすることを目的とした.【方法】HCM・心筋肥大(中隔壁あるいは左室後壁厚:Z score>2)と診断した,初診時15歳以下の2010年1月~2023年12月に心エコーを行った児を対象とし,その経過を後方視的に検討した.【結果】対象は34例(男19女15),初診時年齢の中央値2か月(日齢0~12歳)でHCMは18例,心筋肥大は16例.後者は7例で心筋肥大が改善した(p<0.01).全体,HCMのみ,心筋肥大のみの5年生存率は92.5%,94%,90%で経過中心イベント6例,うち死亡3例を認めた.HCM・心筋肥大両群とも男女比(男:女12:6,7:9),LVPWd/IVSdのZscore(2.36/1.96:2.83/1.62)に差はなかったが,初診時月齢はHCM群で低い傾向があった(HCM0.9:心筋肥大11,p=0.298).HCM群は心筋肥大群より遺伝子異常(HCM15,心筋肥大1,p<0.01),心電図異常(HCM12,心筋肥大3,p=0.0155)の合併が有意に多かった.HCM群では遺伝子異常の有無による生存率の差は認めなかったが,Noonan症候群,生後1週間以内診断群では乳児期早期に心イベントが多かった.一方心筋肥大群では生後1か月以内診断群で有意に心筋肥大の改善がみられ(p<0.01),特に原因の明らかな二次性心筋肥大では生後1か月以内診断群,及び高血圧が原因である群で有意に心筋肥大の改善がみられた(p<0.01).【結語】HCMは心筋肥大に遺伝子異常・心電図異常の合併が有意に多かった.HCMは生後早期診断,Noonan症候群で乳児期早期に心イベントが起こるリスクが高かった.一方心筋肥大は生後早期の診断例,高血圧による二次性心筋肥大は改善が多くみられた.原因不明の心筋肥大を乳児期早期に認めた場合は心電図・遺伝子検査も検討する必要がある.