[II-P03-2-05] Colforsin daropate hydrochloride and venous return curve in the postoperative management of adult congenital heart disease
Keywords:アデール, 塩酸コルホルシンダロパート, 静脈還流曲線
【背景】アデールはアデニル酸シクラーゼを活性化し強心作用と静脈拡張作用を持つ。一方、心拍出量はFrank-Starlingの心拍出量曲線のみでは説明できず、Guytonの静脈還流曲線と交わる循環平衡の概念で考えると理解しやすい。ACHD術後のうっ血解除にアデールが奏功した2例で、循環パラメータの挙動を循環平衡の点から検討した。【対象】症例1: 31歳男性、c-TGA、三尖弁置換術後。術後7日目に強心剤、利尿薬投与下で、胸水と呼吸状態の悪化により心収縮低下。アデール0.5γで胸水は著明に改善した。胸郭内水分量(TFC)、SVV、SV、COは低下した。症例2: 37歳女性、TA、APCからTCPC変換術後。術後の敗血症回復期に肺うっ血が増悪。アデールを0.25γで肺うっ血は改善した。TFC、SVV、CVPは低下した。COは横ばい、SVと心収縮は軽度上昇した。【考察】アデールの静脈拡張作用により、体液のcentralizationが改善しTFCは低下し、うっ血が解除された。静脈内プールが増え血管内volumeが充足しSVVは低下した。一方、強心作用も期待したが、COは症例1で低下、症例2で横ばいであった。症例1では投与前の心拍出曲線は正常より下、静脈還流曲線は正常で循環平衡点は正常より左下にあるはずである。アデールにより心拍出曲線は上がり、静脈還流曲線は下がることで、循環平衡点は左下に移動し、CVPとCOは共に低下したと解釈できる。症例2は投与前の心拍出曲線は正常より下、静脈還流曲線は正常より上で、循環平衡点は正常より右上(高CO高CVP)と考えれば、アデールにより心拍出曲線が上がり、静脈還流曲線が下がることで、COがほぼ変わらないまま、CVPだけ下がる傾向になったと解釈できる。【まとめ】循環動態は心拍出曲線を自由に動くわけではなく、実際は静脈還流曲線との循環平衡点の一点に規定される。アデールのように強心作用と静脈拡張作用のある薬剤は、静脈還流曲線を想定すると理解しやすい。