[II-PD8-5] 高度狭小肺動脈弁輪を含めたファロー四徴症に対する積極的肺動脈弁輪温存術の長期成績について
Keywords:skeltonization, 高度狭小弁輪, 積極的弁輪温存
【背景】ファロー四徴症(TOF)において、肺動脈弁輪温存術(VS)はtrans annular patch法(TAP)に比べて良好な成績が多数報告されているが、高度狭小肺動脈弁輪群(hypoPV)に限った両術式の長期成績の比較については報告が少ない。我々はhypoPVに対しても積極的にVSを施行してきたが、2005年以降はskeltonizationや交連直下まで垂直切開するなどの術式の工夫を行うことでVSの適応範囲を広げて、良好な早期・中期成績を報告してきた。今回はその長期成績を検討した。【方法】 1990年から2017年のTOF(肺動脈閉鎖を除く)に対して心内修復術を行なった261例中術前の肺動脈弁輪径が計測されている症例のうち術前肺動脈弁輪径のZスコアが3.5以下の91例を対象とした。術式、姑息術の有無、心内根治年齢、最終フォロー時の肺動脈弁狭窄(PS)および中等度以上の肺動脈弁逆流の有無(mod. PR)、肺動脈弁輪径 (%of Normal)、肺動脈弁への再手術回避率を検討した。観察期間は最長24年、平均13年。【結果】VSとTAPはそれぞれ36例(39%)と55例で施行され、うち姑息術は2例と24例で施行、心内根治術年齢の中央値は月齢10と16であった。VS施行できたhypo PVの術前平均Zスコアはそれぞれ-4.5と-5.4で、最終フォロー時のPS(m/s)は平均2.1と2.3、mod. PR例は16例(44%)と41例(75%)、肺動脈弁輪径(% of Normal)は平均99と107であった。術前平均Zスコア(p=0.02)ともmod. PR率(p=0.005)で有意差があった。肺動脈弁に対する再手術回避率は10年で100%と93%、15年で93%と78%であった。hypo PVに対するVS施行率は、2004年以前の12例(27%)に比べて、2005年以降は24例(51%)と有意に(p=0.03)増加しており、2005年以降に行った症例は2024年現在1例も肺動脈弁への再手術には至っていない。【結語】hypo PVに対する積極的VSは長期的にも有効であると考えられる。しかし今後、超長期での再介入や右心機能を含めた成績については検討が必要である。