[II-PD9-5] 拘束性障害を有する小児重症心不全に対する内科治療と補助循環治療の役割
Keywords:拘束型心筋症, 心臓移植, 補助人工心臓
心収縮の低下した心不全に対して、いわゆるfantastic fourを基本とした内科的薬物療法や、補助人工心臓(VAD)治療は、特に成人領域において十分なエビデンスのもとにその有用性は確立しているが、心室拡張障害に起因する心不全に対しては、内科的治療、VAD治療ともに有用性が確立しているとは言い難い。特に拘束型心筋症(RCM)のような、重度の両心室拡張障害を特徴とする心筋症において、現時点では有効な薬物治療は存在せず、VAD治療にも困難を伴う。しかし一方で、小児RCMの生命予後は非常に悪く、2年移植回避生存率は北米のレジストリ研究において約40%、わが国の多施設共同研究でも60%程度である。また、RCMはわが国の小児心臓移植症例の約20%を占めており、RCMに対する治療戦略の確立は喫緊の課題である。加えて、RCMは末期に至るまで心拍出量が比較的保たれており、患者の臨床症状が分かりにくいことが、適切な移植適応検討時期の判断を困難にしている。これまで当院では42例の小児RCMを診療してきた。うち24例(57%)が心臓移植に到達しており、8例(19%)が移植待機中、4例(10%)が死亡した。診断から2年、5年の移植回避生存率はそれぞれ56%、34%であった。薬物療法としては、抗血小板薬、利尿薬、ACE阻害薬/ARNI、β遮断薬が用いられることが多いが、心不全や臓器うっ血の進行に伴い静注強心薬が必要となる。また、5例では移植待機中に肺高血圧や心不全の進行からVADを必要とし、うち1例ではBiVADを要した。RCMに対するVAD管理はDCMに対するそれとは異なり、右心不全や臓器うっ血への対応が重要となり、管理の難易度も非常に高い。本セッションでは、RCMに対する内科治療・VAD治療とそれらの限界について、症例を提示しながら議論したい。