The 60th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Symposium

Symposium 5

Fri. Jul 12, 2024 8:00 AM - 9:30 AM ROOM 3 (4F 409+410)

座長:齋木 宏文(岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器部門)
座長:早渕 康信(徳島大学病院 小児科 地域小児科診療部)

[II-SY5-5] 先天性心疾患における Flow Energy Loss 計測と心機能・予後への影響

椎名 由美1,2 (1.聖路加国際病院 循環器内科, 2.東京女子医科大学病院 循環器小児・成人先天性心疾患科)

Keywords:エネルギー損失, 先天性心疾患, 心イベント

心臓 MRIによる右室容積・EF評価は、肺動脈弁置換術の適切なタイミングを決定する上で非常に有用であり、ファロ―四徴症ではガイドラインにそのカットオフ値が明記されている。一方で、restrictive physiologyと呼ばれるようなTOF PS+PR症例やその他の円錐動脈幹異常・二心室修復症例において、同様のカットオフ値を適応してよいかは不明である。成人症例、特に中高年患者においては、右室容積が手術適応に到達する前に、右室拡張障害・右心不全症状を呈し利尿薬が必要となるような症例も稀ではない。そのため「Beyond the RV size」の概念に基づき、新たなパラメーターで慢性的な心負荷の病態を評価した方がよいと提案する論文も散見される。流体力学を用いた新しい指標である、4D flow MRIを用いたエネルギー損失の評価は、その非侵襲性により非常に期待されている指標の一つである。エネルギー損失は乱流により生じる心負荷を示し、圧や容量負荷に対して心血管機能が代償されている時期から異常値を示すため、,現状よりもむしろ将来の心機能低下を予測する指標として期待されている。事実、著明なエネルギー損失を有する高齢者ASやARの予後は不良であると報告されている。一方で全体のエネルギーの何%が失われていると血行動態として異常なのか、またはワンポイントのエネルギー損失値のみで遠隔期の予後予測ができるのか、といった点においては現時点で明確な回答はない。エネルギー損失は、症状が出現する前に治療介入を考慮する新たな指標となりうるかもしれない一方で、数字が独り歩きしエネルギー損失の絶対値のみで、誤って手術時期を判断したりするようなことのないように、総合的に病態を判断する必要があることは言うまでもない。