[III-CPD5-2] 小児循環器医と連携する「いのちの授業」-家庭も巻き込む教科横断的な実践-
Keywords:小学校, いのちの授業, 教育と医療の連携
【はじめに】子供のいじめや自殺、虐待などいのちに関わる問題が深刻さを増す中、小学生を対象に、「日本の小児の心臓移植のドナーは欧米に比べて非常に少ない」という問題をテーマに、多教科や小児循環器医等と連携した「いのちの授業」に取り組んでいる。【方法】「いのちの授業」は、学級活動、総合的な学習の時間、理科、道徳の多教科が連携し、小児循環器医にゲストティーチャーとして参加して頂くパッケージ型の授業である。ねらいは臓器提供の意思決定を促すことではなく、現時点で答えが見つからない脳死下臓器移植の問題に向き合い、自分なりの考えを形成するなど、自他のいのちを尊重し、考え続ける態度を育てることである。日本のドナーが少ない背景に、脳死についての考えや臓器提供の意思表示のルールの違いなどがあると考えられる。そこで「日本は高い医療技術がありながら、身体的危険を冒して海外渡航し、心臓移植手術を受けざるをえない子が多い」という現状を授業のテーマとした。レシピエントの少女が海外渡航移植を受けた理由を予想させ、ゲストティーチャーの医師から、児童の予想や日本と諸外国の移植事情について指導して頂いた。更に投書や動画などを活用し、ドナー側の思いについても学びを深めた。授業と並行して日本臓器移植ネットワークのキッズサイトを活用した調べ学習に取り組み、脳死下臓器移植の知識を深めると共に、家族や友達へのインタビューも行い、自分の考えを形成した。児童は、問題を知り考えること、家族と話し合うこと、意思表示することの大切さ、健康や命の大切さなどについて深く考え、記述し、発言していた。【結果と考察】多教科や小児循環器医等が連携した「いのちの授業」は、児童の主体的な授業参加や深い思考、家族との意見交換などにつながった。今後の継続に向け、活動の工夫を図ると共に、小児循環器医や日本臓器移植ネットワークなど専門家との連携も深めたい。