[III-CPD5-3] 重症心疾患の子どもを思い、小学生とともに「いのち」を考える連携授業の経験
Keywords:学校, 連携, いのちの授業
現在の学習指導要領には、現代の子ども達に求められる資質・能力とは、「知識及び技能」・「思考力、判断力、表現力など」・「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱を中心に、社会の変化に主体的に関わり合い自らの可能性を発揮し、多様な他者と協働しながら、よりよい社会と幸福な人生を切り拓く力であると記載されている。将来の目的を自ら考え出す創造性や、答えのない課題に対して自身にとっての納得解を見いだすことができる力を育むことによって、予測できない現代をたくましく生き抜く子どもたちを育成することが、学校における教育の目標とされている。当学会では、かねてより、「子どもたちに生きる力を育むために、私たち医療者に何ができるか」を基本テーマに学校との連携の形を模索してきた。その活動の一環として、2018年から2020年に全国遠隔配信教育セミナー「学んで救えるこどもの命 PH Japanプロジェクト」を実施し、2022年には「学校と教育の連携委員会」を立ち上げて今日にいたる。本講演では、演者が重症心疾患の子どもを題材に小学生に向けておこなった「いのちの授業」を紹介する。一つ目は、海外渡航心臓移植をテーマとした多教科連携パッケージ型「いのちの授業」である。養護教諭、理科教諭、道徳担当教諭等が多様な教科が連携して複数回の授業を展開し、医師がゲストティーチャーとして参加することで、心臓移植という高度医療について小学生でも十分に学びを深めることが可能であった。二つ目は、重症の心疾患を患う小学生が詠んだ詩を皆で共有する一コマの授業である。重症患児と日頃から対峙する小児循環器専門医が参加することで臨場感のある生きた授業に繋がり、授業後にも子ども達に日々の大切さを振り返らせるきっかけとなった。これらの経験をもとに、学校教諭と医療者が連携し、小学生とともに考え作り上げる「いのちの授業」の可能性について議論したい。