[III-OR24-03] Considering an appropriate strategy for pulmonary artery sling with tracheal stenotic lesions
Keywords:肺動脈スリング, 気管狭窄, 気管形成術
【背景】気道狭窄病変は心疾患によるチアノーゼや心不全と重なることで病態を複雑かつ重症化させる。気道病変を合併しやすい心疾患の一つに肺動脈sling(PA sling)があり、先天性気管狭窄による重度の呼吸不全を呈する例も多い。【目的】気道狭窄を合併したPA slingの適切な治療介入を明らかにする。【方法】過去25年間に当院で経験したPA sling 12例(男5, 女7)について診療録より後方視的に調査した。【結果】1)基礎疾患:PA slingの合併心疾患はHLHS 1例、TOF 1例、DORV 1例、VSD 2例、ASD 3例、Tricuspid atresia 1例、CAVSD 1例、bicuspid AoV 2例(vAS 1例)、PA sling単独 1例。先天性気管狭窄の合併9例(75%)。食道閉鎖、十二指腸閉鎖、鎖肛、VACTERL連合、染色体異常などの心外合併症6例。2)気道症状:術前の気道狭窄症状9例(75%)、うち呼吸管理を要した重度の呼吸不全7例。3)外科治療: HLHS を除く11例にPA sling解除を施行(手術年齢:日齢2から3歳、中央値5か月)。PA sling解除後も重度の気道狭窄を呈した2例に気管形成術施行。4)転帰:PA sling解除後の気道狭窄症状残存は8例で、うち3例に追加治療(気管形成術2例、Aoつり上げ術1例)を行った。気管形成術後の2例中1例は気管吻合部の肉芽増生により気道狭窄が残存し、術後8か月に換気不全で死亡。気管形成を要しなかった症例で非気道合併症による遠隔期死亡1例。【考察】PA slingに合併した気道狭窄病変には気管形成を要する症例が多いとの報告もあるが、当院では気管形成を要したのは2例のみであった。当院ではまず心臓手術を先行し、PA sling解除を行った後に重度の気管狭窄が残存すれば気管形成を行う方針とすることが多く、心臓手術により気道症状の改善が得られた例が多い。【結論】気道狭窄を合併したPA slingは感染などを契機に重度の呼吸不全を来しうるため、気管病変の適切な診断とPA sling解除を含めた早期の心内修復術が望ましい。